2022.05.25

食べるぞ!世界の地元メシ
【私の食のオススメ本】

食べるぞ!世界の地元メシ 表紙

  • 書名:食べるぞ!世界の地元メシ
  • 著者:岡崎大五
  • 発行所:講談社
  • 発行年:2021年

『食べるぞ!世界の地元めし』というfacebookページの公開グループをフォローしている。世界でこんなの食べたことがある、今日こんなの食べた、というある意味<投稿自慢大会>でもあるけれど、海外在留者や旅行者などの写真は寛容に受けとめると実に面白い。これを飲んだぞワイン自慢のグループよりは俄然興味をそそる。まあ、中には普通の日本の朝食とか出てきて?なことはあるのだが。

その公開グループの主宰者がこの本の著者で旅めしの達人、岡崎大五氏だ。本書は世界中で「うまい!」を探すというグルメエッセイだ。エッセイだからというわけではないが文章とモノクロのイラスト(こちらは豊富)のみ。

ガイドブックに載らない、世界中の町にあるちょっとした食堂や家庭で出会った「超絶ウマイモノ」を語る著者は1962年生まれで世界各国を巡った後、海外専門のフリー添乗員などの仕事をしていた。その経験を活かしたエッセイや小説を発表するようになった。訪問国は85カ国。

本書は帯にあるように<ネットではたどり着けない>話が満載である。ただ、エッセイというより日記小説のような雰囲気だ。特に椎名誠の軽い冒険的エッセイが好きな人にはオススメである。面白おかしく読んだ時代の人には良いかもしれない。著者の文章を読んでいるとそんな気がする。

なかなか海外を自由に歩けない現在、行けるその日を夢見て読むには楽しい。

キューバの「プリン」の話。日式ハマグリと北朝鮮。スリランカの「カレーパン」。バルもタパスは食堂的であるべきという話。ノルウエー、タラをめぐる冒険。イタリアの「レモンピッツア」。バンコク、朝のムービン(豚串肉)と炭焼きトースト。タイのアヒルラーメン。オランダの「カレー焼きそばコロッケ」。「チェブジェン」はセネガルの魚の煮汁で炊いたピラフのような米料理の話。

われわれが本書にあるようなややディープな道を辿って「食の旅」ができるかといえばそうではないことが多い。やはりガイドブックに載っているところで安心を確保するのだと思う。その点でもうらやましい旅である。そしてこの本には、RIFFで以前紹介した、世界中の台所で食事を「ねだる」という山本雅也著『キッチハイク!突撃!世界の晩ごはん』にも似ていて旅の爽快感も備えている。

WRITER Joji Itaya

出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。