2024.05.27

肉完全バイブル
【私の食のオススメ本】

  • 書名:肉完全バイブル
  • 監修:山本謙治 高良康之
  • 発行所:ナツメ社
  • 発行年:2022年

WAGYU(和牛)のことについて書くことになって、はたと気づいた。A5ランクの和牛って、実際よくわかっていないということに。そのくせして「僕はどんな高級なサシの入ったものよりも赤みの和牛の方が好きだな」とか言ってきたわけである。そもそも<和牛>ってわかってるのか、オレ⁉︎ということで、この本を購入するに至ったのだ。

この本はタイトル通り、和牛だけではなく肉のバイブルである。そして「肉好きなら知っておきたい知識と実践のすべてをこの一冊で」解決してしまおうという自分の安直な精神にもぴったりな読みやすいサイズ感だ。牛、豚、鶏についての詳細がわかり、ページ数は少ないがその他の肉として羊、馬、さらに鹿、猪、ウサギ、ウズラ、キジ、鳩、熊、穴熊などのジビエにも触れ、その部位別成分もわかって面白い。

このRIFFというWEBメディアでは「なぜ人間は肉を食べるのか?」という疑問からいくつかの本を取り上げてきた。『ドミニク・レステル  肉食の哲学』『マルタ・ザラスカ 人類はなぜ肉食をやめられないか』『鯖田豊之 肉食の思想〜ヨーロッパ精神の再発見』などであるが、今回紹介するのは、そのような疑問や思想が入り込む余地もない、食肉愛に溢れた監修者によってまとめられた肉の攻略本でる。

もちろん、自給率、安全性やエサ問題、肉が食べられなくなったらどうしよう的な立場で、しっかりと解説されている。

監修の山本謙治氏は大手シンクタンクで農畜産関連の調査・コンサルティングに従事していたが、株式会社グッドテーブルズを設立し、農畜産物流コンサルタントを行っている。著書も多く、農と食のジャーナリストでもある。

同じく、どう美味しく食べるか、の分野監修は、フランスでの研鑽を積み帰国後、赤坂「マエストロ・ポール・ボキューズ・トーキョー」副料理長、日比谷「南部亭」「銀座レカン」の料理長を歴任した『レストラン ラフィナージュ』オーナーシェフ・高良康之氏。本書では、調理理論を活かした16品の料理レシピと17種のソースレシピを公開している。

自分はA5ランクの和牛というものを食したこともあるのだが、本マグロの大トロ同様、その美味しさを表現、特に比較するための舌と筆力を持ち合わせていない。形容詞が削られ、精緻なデータと分析からなる本書の文章なのに空腹を誘うという点で参考にしたい。

歩留等級と肉質等級が美味しさのランクではない。適正価格の基準。
畜産副生物。食肉をつくるために一緒に生産されたものという位置付け。
石川の肉料理は治部煮
このとおりに焼けば美味しさにありつけると思わせてくれる調理レシピ

本書を読んでて驚嘆したのは、人間がいかに大変な努力をしながら「おいしい肉」を育てることに労力と年月を費やしてきたかということだ。

このまっすぐな食肉愛は世の中から消えることはない!と確信できる。それが環境や経済にどう影響するかは別として。

WRITER Joji Itaya

出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。