2021.11.24

米原万里 旅行者の朝食【私の食のオススメ本】

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米原万里 旅行者の朝食の表紙

  • 書名:旅行者の朝食
  • 著者:米原万里
  • 発行所:株式会社文藝春秋
  • 発行年:2002年 単行本 2004年文庫本第一刷

著者。米原万里さんは2006年に56歳で亡くなった。ロシア語の同時通訳では右に出るものはいなかった。旧ソ連・ロシアからの要人来日のおりには、日本中の人がその要人の必ず横にいる姿をテレビで目にした。晩年は作家としてノンフィクションやエッセイを残した。

父親が日本共産党の常任幹部だったこともあり、小学三年生の時から5年間プラハに暮らす。この時チェコ語ではなく、在チェコ・旧ソビエト大使館付属ロシア語学校で学んだ。

本書は、おいしいものは好きで、目の前にだされると理性がとんでしまうが美食家やグルメではない、という著者が語る食べ物の話である。食べて書いているうちに溜まってしまった文章をまとめた、と記している。

タイトルはロシアの小噺からとられた。森で熊にあった旅人が熊に「お前は何者か」と問われ「旅行者だ」と答えると、熊は「いや、私が旅行者で、お前は『旅行者の朝食』だ」と言ったという話である。

ロシアでは小噺とユーモアは欠かせないそうだ。それがこの本には詰まっている。

40度が適正と言われるウォトカ(ウオッカ)の話。キャビアをめぐる虚実。トマト、ジャガイモ、トウモロコシはアメリカ大陸を発見したコロンブスのお土産。ロシアとは切っても切れないジャガイモだが、歴史は意外に浅いということ。

ケストナーの「点子ちゃんとアントン」に出てくるトルコ蜜飴はプラハで食べたヌガーではなかったかという話。東海林さだお「タクアンの丸かじり」にはじまるシリーズを読んで食べたくなる海外在住者はりっぱな愛国者だということ・・軽妙にかつ膨大な知識をもって著者は語り尽くす。

そして、ハイジが愛飲した山羊の乳。ちびくろサンボは虎入りのバターを食べたか。狐から逃れた丸パンの口上。日本でも親しまれているロシア民話の「大きな蕪」のこと。おむすびコロリンの災難・・とファンタジーも子供の頃の食のトラウマと重ね、当時の世相も併せて愉快に伝える。

この本の話は古いことなのに古くはならない。そして米原さんのあの声も聞こえてくる。

WRITER Joji Itaya

出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。

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