2022.03.30

EAT KANAZAWA 2022 前夜祭 at. A_RESTAURANT Drink Collaboration

Alembic GIN × Wataru – ぶどうとだるま × Take – A_RESTAURANT
Welcome Cocktails
March .19 . 2022

3/19(土)に、EAT KANAZAWA 前夜祭がA_RESTAURANTで開催されました。

まん延防止等重点措置期間中の為、ディナー後にアフターパーティーでカクテルを楽しむことはできないので、Barとしてはディナー前の食前酒に全力を注ぐことにしました。

食前酒に全力注入!ということで、食前酒はDrink Collaboration と銘打って、金沢・大野町で立ち上がったAlembic蒸留所のテストバッチ(試作品)を使い、西麻布の “ぶどうとだるま “のWataruさんと、私、A_RESTAURANTのTakeの2人のバーテンダーが各3杯づつ考案したオリジナルカクテルを楽しんでいただく…というのっけから情報量満載のWelcome Drink で前夜祭をスタートさせました。

A_RESTAURANTイベントのドリンクメニュー

※イベント開催時、Alembic蒸留所は製造免許申請中のため、有限会社ヴィルゴビール醸造部の協力のもと設備を借り、Alembic代表の中川さんが蒸留したテストバッチとなります。

提供されたテストバッチは

  • ジュニパーのみを蒸留したABV50%のGIN(Alembic Test Batch GIN “Juniper Berry”)
  • アルコールに杉の葉を漬け込み蒸留したABV50%のスピリッツ(Alembic Test Batch Spirits “Cedar Leaves” )

の2種類。

<この2種類と、両方をブレンドした計3種類をベーススピリッツに使用し、金沢をイメージした3杯のカクテルをお互いに考える>というルールのみWataruさんと打ち合わせし、以後、テストバッチのテイスティングコメントや、カクテルの内容など一切やりとりをせず、お互いの作ったものを当日せーのでお客様に提供することにしました。

これはまず、「何の干渉も受けずお互いの感性だけでそれぞれどんなものを仕上げてくるかを楽しみたい」ということがありました。そして、Mixologyなどを筆頭に目まぐるしく進化する昨今のBarシーンにおいて「どのような製品が求められているか、使う側(バーテンダー)の感性次第で作りたいもの、表現したいことがこれだけ違い、実際みんな全然違うことしちゃうよ」ということを、これから蒸留所の稼働と販売が始まるAlembicさんに見てもらい、参考になれば!という思いでのことでした。

Alembic蒸留所とテストバッチの解説をするAlembic代表中川さん

当日、2人で話すとテストバッチを飲んだ印象は全くと言っていいほど同じ印象でした(※サンプル段階の為、2人のテイスティングコメントは控えさせていただきます)。

ただ、おもしろいもので、同じ印象なのにその先の方向性が全くの別方向に向かいました。
Wataruさんは素材の味を引き出すシンプルな方向へ。一方私は、生産者や土地などからインスピレーションを受けストーリーを重視した方向へ。たった2人でもこうも違うか!というほど別のものがそろいました。

Wataruさんのカクテルを考察するのも恐れ多いので、ここでは私の考案した3杯のカクテルのレシピと、表現したかった想いを解説していきたいと思います。

考案したカクテルを解説する ぶどうとだるまのWataruさん
著名なゲストを前にテンパるA_RESTAURANTのTake

浅野川ジントニック

Craft GIN & Homemade Tonic “中川家 “

イメージしたのは金沢が誇る2大河川のひとつである”浅野川”。

金沢の奥座敷と言われる自然豊かな山間エリア湯涌の杉と、この時期とれる山菜。浅野川が流れる東山・主計町といった茶屋街のお香の香り。これらがAlembic蒸溜所のある大野に流れ着き、金沢の山から海まで繋ぐ浅野川をイメージしたカクテルに仕上げました。

発想の起点は中川夫妻。もともと私の友人でもある中川さんの奥様は、金沢で4代続く芸妓さんたちのお師匠さんである邦楽演奏家。茶屋街(奥様)と大野(中川さん)を浅野川で繋いで新たなものを生み出す(昨年誕生したご息女)で中川さんの家族を表現したいという想いからだった。
お茶屋さんに行ったこともない私は奥様に相談した。”ねぇ、芸妓さんってどんな匂い?”
ワードだけ抜き出すとただの変態である(笑)

事情を説明すると、芸妓さんやお茶屋さんを連想する香りは”お香の香り”というアドバイスが・・。

そこで香木の” 白檀 ”の香りを纏った自家製トニックウォーターで、ジントニックを作ろうと考えました。

浅野川ジントニック

  • Alembic Test Batch GIN “Juniper Berry”  30ml
  • Alembic Test Batch Spirits “Cedar Leaves”    10ml
  • 自家製白檀リキッド  30ml・・・※
  • Fever Tree premium soda 適量
  • アンゴシュチュラビターズ  1Dash
  • レモンピール
  • ディル
  • スティックアイス(KURAMOTO ICE)

タンブラーの底にビターズを垂らしスティックアイスを入れる。
スピリッツと白檀リキッドを注ぎ入れステア。
ソーダを氷に当たらないよう注ぎビルド。
レモンピールとディルのガーニッシュを飾る。

ガーニッシュは見返り柳と三日月をイメージ。

見返り柳は中川さんの奥様から「こーゆーの好きでしょ?(笑) 」と教えていただいたもので、廓からの帰りに、名残惜しく振り返る為に茶屋街の出口に植えられてる柳の木だそう。

そんな色気のある逸話、大好きです!とディルを使って表現。
ここに私の得意な(?)妄想ストーリーを追加。街の出口で ”現実” に帰る一歩手前で名残惜しく ” 幻夢 “ を振り返る男の満たされない気持ちを、満月ではない欠けた月=三日月で表現しました。

※自家製白檀リキッド

  • オレンジ果肉  1/2
  • レモン果肉  1/2
  • ライム果肉  1/2
  • フレッシュレモンジュース  200ml
  • アガベシロップ  100ml
  • オールスパイス  5g
  • グリーンカルダモン  10ケ
  • ジュニパーベリー  5g
  • レモングラス  5g
  • バイマックル  1枚
  • 白檀  0.2g
  • 自家製aromaticビターズ  1tsp
  • ドライフキノトウ  1.5g
  • ドライこしあぶら  1g
  • 水  500ml
  • マルガリータソルト  1つまみ

ジュニパーを軽く潰す。白檀はナイフで削る。山菜はドライにして手で握りつぶして粉々にする。

全ての材料を鍋に入れ、沸騰後弱火で15min煮詰め、粗熱を取り濾す。

湊のネグローニ

Negroni 大野 twist

余計なものを入れない、ジュニパーのみで蒸留したドライGINを使って、アペリティフにふさわしいカクテルを考えるとなると、思いつくのはやはりネグローニ。世界的に人気の高いこのカクテルを、大野の材料を使いツイストして、AlembicのGIN、延いてはバックグラウンドにある大野という湊町を世界に発信したいという思いで考案したカクテルです。

大野は加賀藩政時に北前船の寄港として栄えた醤油の町。

スイートヴェルモットのカラメルを詰めたような味わいや、円熟したドライフルーツのような香りは熟成した味噌や醤油とどこか似た印象があるのでネグローニにより深い” 和 “のコクを重ねられると思い、ヴェルモットに長期熟成の味噌を溶かし込み、かなりクセの強いイワシのいしるをビターズ代わりに使い、より味わいと香りに複雑さを重ねた。

カンパリの苦味と味噌を溶かしたヴェルモットとなると、アペリティフには少し重たすぎる印象を受けるので、スライスしたきゅうりを加え、青い香りでぼやけた味わいを引き締める。

まさにつきだしで出てくるもろきゅうのイメージに仕上げた。

湊のネグローニ

  • Alembic Test Batch GIN “Juniper Berry”   30ml
  • Campari  10ml
  • 味噌インフューズスイートヴェルモット  10ml・・・※
  • ロックアイス
  • スライスきゅうり
  • いしる – ヤマト醤油味噌  1Dash

※味噌インフューズスイートヴェルモット

  • Carpano Antica Formula  300ml
  • 長期熟成味噌 かなえ – ヤマト醤油味噌  3g

ロックグラスにロックアイスを入れ、材料を注ぎステア。

氷の周りにスライスきゅうりを巻いていしるを氷の上に垂らす。

畑のイカ 大海を泳ぐ

大野から世界へ

サンプルの2つのスピリッツがアルコール度数50%なので、強いカクテルが得意でない方や、女性に好まれる味わいのカクテルも用意したいと思いつつ、アペリティフなのでスッキリした印象を待たせつつも飲みやすい甘味のあるショートカクテルを考案しました。
レモンやライムの酸味で爽やかに仕上げると、ベーススピリッツのボタニカル = 杉のフレーバーが感じにくくなるので、生姜の辛みで引き締めた爽やかさを持たせました。

自家製ジンジャエールを作る時にでる煮詰めた生姜の千切りをディハイドレーターで乾燥させたもの = 通称畑のイカ(おつまみのさきいかのような見た目と止まらなく味わいから)を、スピリッツと一緒にすり鉢で擦って瞬間的にお酒に香りと味を移してベースに使う。
この畑のイカが大野のスピリッツと出会い、ついに憧れの海に出るというストーリーを持たせたカクテルに仕上げる為、山や陸地を連想させる香りのレイヤーを重ねるイメージでハーブも一緒にすり鉢で擦って海への憧れを強くする。そこにバタフライピーで海の青を加え遂に大海に出る。
脳内ではおよげ!たいやきくんの映像が流れている(笑)

畑のイカ 大海を泳ぐ

  • Alembic Test Batch Spirits “Cedar Leaves”   50ml
  • 畑のイカ(前述)  10g
  • 実山椒  4g
  • レモンバーム  3g
  • フレンチタラゴン  1.5g
  • バタフライピーティー  20ml
  • 1883 ラベンダーシロップ  1tsp

すり鉢で実山椒を潰し畑のイカとハーブ、スピリッツを入れ、すりこぎを回しスピリッツに香りを移す。香りが移ったらストレーナーで濾す。
シェーカーに材料を注ぎ氷を入れシェーク。カクテルグラスに注ぐ。

今回のように決められたスピリッツでテーマを設けてのカクテルメイクは想像力・妄想力が掻き立てられ、考えてる段階から楽しくてしょうがない。さらには別のBarmanが自分と同じ条件で全く別のものを作り上げてきて、どんなところに着目してカクテルメイクしたか話せる機会はなかなかないので本当に楽しかった。

AlembicのGINが完成したら、そのGINから受けたインスピレーションでまた訳のわからない妄想ストーリーを持たせたカクテルを作って、GINと一緒に世界に発信していきたいです。

※本イベントは参加者全員にPCR検査・当日の抗原検査を実施の上、手指の消毒、店内の換気、ソーシャルディスタンスの確保、アルコール提供20時迄のルールを徹底し開催いたしました。

元音響エンジニアのバーマン。
外食はコンサートと同じ。料理やドリンク、空間やサービスで楽しいショーを体験する時間。ステージを彩るドリンクで、ショーの一翼を担う。