私は、だいたい数日に一食しか食べない。一ヶ月に一食のときもある。宗教上の理由でも、ストイックなポリシーでもなく、ただなんとなく食べたい時に食べるとこのサイクルになってしまう。だから私は食に対して真剣である。久々の一食を「適当」に食べてなるものか。久々の食事が卵かけ御飯だとしよう。先に白身と醤油とを御飯にしっかりまぜて、御飯をふかふかにしてから器によそって、上に黄身を落とす。このときに醤油がちょっと強いかなというぐらいの加減がちょうどいい。醤油の味わい、黄身のコク、御飯の甘さ。複雑にして鮮烈な味わいの粒子群は、腹を空かせた者の頭上に降りそそがれる神からの贈物である。自然と口から出るのは、「ありがたい」の一言。
人のお家のお雑煮の中身や味を聞くと、その家の出身地域がわかることがある。 時として別の地方同士の夫婦が結婚すると、ハイブリッド化した雑煮が誕生するから、一つの料理名でありながらこれほどバリエーションに富んだ料理もなかなかない。 雑煮の歴史は、室町時代に遡るとされる。 古く雑煮は史料の中では「烹雑(ほ……