2024.05.20

パンどろぼう
 おにぎりぼうやのたびだち【私の食のオススメ本】

  • 書名:パンどろぼう おにぎりぼうやのたびだち
  • 著者:柴田ケイコ
  • 発行所:KADOKAWA
  • 発行年:2022年 初版 2024年12刷

以前<いま、パンの絵本といえば柴田ケイコだ。絵本業界では異例な2年間でシリーズ累計130万部発行。この絵本の対象年齢は3、4、5歳〜だが大人にも人気だ。大人用も含めたシュールなキャラクターのさまざまなグッズも人気。>と、2020年発行、最初の『パンどろぼう』という絵本を紹介した。

この「よむとおなかのすくユーモア本」は2024年の時点で、発行部数がシリーズ累計270万部を超えている。このシリーズの人気のひとつに、出てくるキャラクターの変装というのがある。幼児たちはこの変装が誰か明かされるのをワクワクしながら読み聞かせが進んでいくのを楽しむ。

シリーズの主人公、パンどろぼうは、なぜか食パン。世界中のパンを食べてきた。パンを偏愛するパンだ。発想がシュールなのだ。

「おにぎり」のことを調べている時にまた、この絵本に再会した。

ところが今回はおにぎり屋を営む<おにぎり一家(絵本では”いっか”)>の話である。毎日毎日おにぎりばかりの食卓に「たまには ちがうものを たべたいやい」とうんざりした<おにぎり坊や>が「おにぎりは はらもちもいいし このよで いちばん おいしいんでい」という父親のおにぎりと喧嘩をして家をとび出す話である。

途中、お伽話『おむすび ころりん』を模したシーンがあるのだが、これは『おむすび ころりん』が「鼠の餠つき」「鼠浄土」とも言われ、鼠が関わるところから来ているのかもしれない。

そして、パンに目覚めた<おにぎり坊や>は家に戻り、父親とパンvsおにぎりのいいとこ対決をすることになる。

この絵本が昨今の世界的おにぎりブームを見越して作品なのか、単にこどもが好きなものをテーマにしたのかはわからない。なぜパンがいいのか、なぜおにぎりがすばらしいのか、つい、子どもたちも一緒に考えて話しはじめるのだろうなと、想像した。

WRITER Joji Itaya

出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。