“ マルガリータ”
バーのカウンターに座る原田知世のセリフ。
映画『黒いドレスの女』(1987年 崔洋一監督)の1シーンだ。
当時高校生の僕は、『時をかける少女』の清純なイメージがぬけず、はすっぱな原田知世の姿に「おいおい、どうした?!知世」と思いながら、映画のCMを眺めていた。
ちなみに原作は我らが師匠、北方謙三先生である。Z世代の諸君にはまったく馴染みのない、雑誌『ホットドッグプレス』で思春期の男子の心の支えであった「試みの地平線」の北方謙三先生である。
そんなことはどうでもよい、いや、どうでもよいわけはないが、今回は映画の話や北方謙三先生のハードボイルド論について語るつもりはない。僕はこの映画のCMで「マルガリータ」という飲み物を知ったのだ。ただそれが言いたかっただけだ。
「マルガリータ」はテキーラベースのカクテル。個人的には少し気温が高くなった初夏の頃に飲みたい。テキーラにライムジュースとホワイトキュラソーを加えてシェイクし、グラスの縁にレモンの果汁を、そしてグラスを回しながら皿の上の塩を縁に薄く付けるいわゆるスノースタイルで提供される。
初めて飲んだ時は、塩と液体のバランスをどのようにしたらよいかわからず、さらに慣れないオーセンティックなバーの雰囲気に飲み込まれ、一気に飲み干し京王線の終点まで運ばれていった記憶がある。「マルガリータ」のレシピは、テキーラがレシピの半量程度を使うので、飲むときはご注意を。
そんな「マルガリータ」の発祥には諸説あり、メキシコ原産のスピリッツ「テキーラ」ゆえ、メキシコ発もあれば、米国・ロサンゼルスのバー発祥という説もある。いずれも女性にまつわるエピソードが有名だ。
そう、お酒やカクテルって、味わう以外にそれにまつわるいろいろななエピソードや歴史、サイドストーリーが面白いのだ。ほんとか嘘かわからない話もあるけど、それはそれでよし。たった一杯の飲み物が、物語を生み出すなんて夢がある。
コロナ禍以降、「お酒」を取り巻く環境が変化しつつあるけど、外に出て、お店でお酒を楽しむ文化は衰退しないでほしいなと思う。だって、いろんな「物語」との出会いが減るじゃないですか。作り手としても、ジンやスピリッツのレシピを考えるとき、この酒が世にでて、これからどんな物語を作っていくのかと妄想すると楽しくて仕方ない。
ちなみに念のため伝えておきますが、僕は薬師丸ひろ子ファンである。
お腹がすいたから食べる、カラダによいから食べる、生きるために食べる。いろんな食べるがありますよね。なかでも、僕は大切な人と一緒に美味しいを分かち合って食べる時間が好きです。「いただきます」から始まって、「ごちそうさま」で終わる時間。食卓を囲んで、お腹も気持ちもいっぱいになって、「あぁ、今日も良い一日だったな」と思えるこのシアワセな時間を、より多くの人が過ごしてもらえるように農業、食を楽しむ場の提供、そして醸造の仕事を通して伝えて行きたいと思います。