2020.12.31

「きつね」と「たぬき」と「いなり」うどんの不思議

金沢のたぬきうどんときつねうどん

今日はおうどんにしよう♪
寒くなると、そう思う日が増える。

讃岐系が登場して金沢にも何件も讃岐うどんの店ができた。だが、私の遺伝子にあるのは、ツルツルでやわらかーい「おうどん」。お出汁も優しくゴクゴク飲む、そんなうどんな気がしてならない。

そんなお昼。お気に入りのうどん屋で「いなりうどん」を食べながらぼんやり考えた。そういえば、金沢でいなりが乗ったうどんを「きつねうどん」とは言わないなあ。まてよ。でも「たぬきうどん」はメニューにあるぞ。

ここで脳裏にかの方が登場。
「あ~〇い きつねと み〇りの たぬき♪」
そうだ、即席麺業界では、きつねさんはいなり。たぬきさんは揚げ玉なのだ。なるほど、金沢では きつね、とは言わずに乗ってる具がそのままうどんの名称なのねと、そんな簡単なものではない。だって、「いなりうどん」の仲間とも言える、いなりうどんの餡かけを金沢では「たぬきうどん」と言うのだから。

いなりうどん
金沢の「いなりうどん」

そこでオフィスに帰って聞き取り調査。
うまい具合に移住者が多い(株)OPENSAUCE。こんな時は役に立つ(笑)。
「たぬきうどんはどんなうどん?何が乗ってる?」
は?何言ってんの、お前?的な質問を投げる私。

「天かすでしょ。」「揚げ玉にワカメだな。」という意見に加え「たぬきうどんの具は揚げ玉。出汁の実力が問われるうどんだ!」とたぬき愛を出してくる人も。そこで、「金沢のたぬきうどんは刻んだいなりの乗った餡かけうどんなんだよね」と伝えると、混乱する者あり、「あ、聞いたことある!関東と関西で違うんだよね」という人もいた。

金沢のたぬきうどん
金沢の「たぬきうどん」

どうやら、京都は刻んだいなりが乗ったうどんをきつねうどん。その餡かけをたぬきと呼ぶ。しかも、同じ関西でも大阪は甘く炊いた大きないなりが乗ったうどんをきつねと呼ぶらしい。

頭を抱える私に、賢者が現れて言った。「どちらも正解だよ」。賢者によると、「タネ抜き」が「たぬき」、なのだとか。いなり寿司からタネを抜いたのがいなりが乗ったたぬきさん。天ぷらのタネ抜きが揚げ玉(天かす)のたぬきさん。だからどちらも正解という訳だ。(所説あったが、なんだかこれが私にはわかりやすかった)

結果、私の金沢のいなりうどんのイメージはこうだ。
刻んだ稲荷が乗ったうどんは「いなりうどん」。餡かけになると「たぬきうどん」。 大きな甘い稲荷が乗ったうどんは「きつねうどん」

東京のたぬきうどん
関東のたぬきうどん (生卵入り)

特に関東地方から金沢へ来る人には、うどん屋での注文に気を付けていただきたい。そして、せっかくなので出汁そのものの味がしみた「いなりうどん」か、冬の季節なら餡かけに生姜でホカホカと心も体も温まる「たぬきうどん」を是非試してみてはいかが?


text:Ryouko Takakuwa
(本稿はOPENSAUCE元メンバー在籍中の投稿記事です)