2022.03.30

内田真美 私的台湾食記帖
【私の食のオススメ本】

  • 書名:私的台湾食記帖
  • 著者:内田真美
  • 発行所:KTC中央出版
  • 発行年:2021年 

料理研究家、内田真美はこの本を書くまで、台湾に魅せられ15年間通い詰めている。内田真美は子供たちと友人とよく歩き、よく食べる。紹介本なのだがタイトルの通り日記のようなもので、読んでいて心地よい。一緒にお茶を飲みながら、写真を見せてもらいながら旅のみやげ話を聞いているようだ。

この本は子供連れでも1日で楽しめる、台北を中心とした案内になっている。(ただし、2016年の情報なので、古く残る店もあるが入れ替わりもあるので出かけるには事前の確認が必要)

お店や場所に添えられた言葉が台湾へ誘う。「散歩がてらの朝ごはんにおすすめの朝市」「素通りできない甘味店」「サイズ感がほどよく、子供と一緒に行くのにちょうど夜市」「ワイワイと、包みながら食べる楽しみ」「お母さんの味を大切に受け継ぐ、小さな緑豆専門店」「台湾の人にまじって楽しむ朝ごはん」・・・

・・まじって楽しむ朝食。
台湾といえば夜市のような夜に食べ歩くイメージが強いが、この本では旅行ではなく昼の日常生活をしているような場所が多く紹介されている。

海外旅行などで同じ場所にしばらくいて、毎朝、ホテルではなく近くのカフェに通っていると3日目くらいにその街に馴染んできた感じがしてきて居心地が良くなる。日本を旅して思うのはこの「まじって楽しむ」という感覚が薄いことだ

金沢の新しいホテルには朝食のとれるレストランやカフェが付いていないところも多い。設備と運営のコストから考えて省かれているのだろう。とはいえ、ホテルのある周りには朝から食事を提供する店が少ない。ホテルで食事を取れたにせよ、特に海外から来た場合、毎朝同じ、ホテルのコンチネンタルやアメリカン・ブレックファーストを食べたいだろうか?

ならば「朝食の楽しいまち、金沢」というようにならないものだろうか?

国内外の観光客もこれから戻ってくるだろう。一般の生活者も、夜型が減っていく。みんなが混在して(まじって)朝を楽しめる文化が始まらないかと期待している。「私的台湾食記帖」はそんな考えの参考として読むことのできるやさしく、丁寧な語り口の品のいい本である。

追記:本書ではRIFFでブランドブックとして紹介している台湾のライフスタイルショップ『神農生活』が生まれた『神農市場』も紹介されている。

WRITER Joji Itaya

出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。