2019.07.05

夏の旬対談 タコ編

タコの足

OPENSAUCEのメンバー、料理人・髙木慎一朗と歴史学者・三石晃生による夏の旬の対談。
ミズダコの旬は夏、マダコは冬と夏、ということから話は少し横道へ。アワビの 天敵ということで話に登場したタコの生態談義、お楽しみください。


髙木:帰巣本能といえば、タコ。
能登の宇出津(うしつ)って港があって、そこの競りはまさに港でやるんですよ。

そうすると、タコとかは普通、共食いとかするんで一匹分、ネットに入れるんですね。

それで水槽に入れておくんですけど、たまに紐がゆるんで脱走するやつがいるんです。

もう、一直線に海に向かいますよ。あれ、すごいですね。

それを捕まえて、漁師さんがボーンとバケツとかに入れるじゃないですか。で、また出てきても海の方にしか出てこない、必ず。

それ面白かったんで、バケツに入れてぐるぐる回して、置いといたらそれでもやっぱり海のほうへ行く。

一回はボトンと倒れて別の方へ行くんですけど、いつの間にか海の方へ向かってる。あれってなんなんでしょうねえ。

三石:うーん、帰巣本能なんでしょうねえ。

板谷:ウミガメの子供と一緒ですか。生まれてすぐに海に向かう。

髙木:あれってなんでわかるんですかね、音?

三石:次のゲストはさかなクン呼んで。答えてもらいましょう。

髙木:さかなクン呼んでタコの話すると(笑)。

三石:タコでいうと…ずいぶん前につきあってた彼女が、忙しくて会ってなかったんですけど、どっかのドラマ見たかの影響で、「ウサギって、一人にすると寂しくて死んじゃうんだよ?」って言うんで、

「それってウサギじゃなくてタコだよ。タコって一匹にすると死んじゃうんだ」って言ったことがあって。

タコって群れで飼わないとダメなんです。一匹にすると死んじゃうんです。フィジカル強いくせに、メンタルがむちゃ弱い。

ウサギはね、むしろ他が一緒にいるとエサの食い合いや喧嘩になるんで、むしろ一羽がいいんですよ。

髙木:タコは寂しがりやなんだ。

三石:タコは寂しがりやなので、基本的に隅っこのほうの決まったところにしかいないし、仲間いないとわかると、エサ食べなくなっちゃうし、ストレスあると自傷行為まではじめちゃう。知能が高いので、ストレスに弱い。

髙木:そんな小心者なんだ。

三石:「その性質はウサギじゃなくて、タコだね。君はタコなの?」って聞いちゃって。

髙木:それ普通に聞いてるとケンカ売ってるようにしか見えないけど(笑)

三石:ちょいちょいね、会話が成立しなかったんですよ。

「うわぁ〜変な虫がいる!」「変な虫という名前の虫はいないよ?ここに図鑑があるから名前を調べてどの虫かわかったら出してあげる」って言ったらその図鑑で叩かれたので仕方なく外に出したんですが(笑)。

髙木:それで何ヶ月くらい付き合ったの、その人と。

三石:これでも一年続きましたよ。

髙木:一年周期して終わったんですね。ああ…。

でも、タコってそうなんですね。

三石:タコの足のほうに毒があるってよく言われますよね。だから昔は大根で叩いたり。

髙木:あれでも、大根で叩くと柔らかくなるからって見方もありますね。あれ本当なんですか?

三石:今でもやるんですか?

髙木:うちですか?やんないですよ。

三石:(笑)柔らかくなるのは毒気が抜けるからだって子供の頃に教わった気がする。大根なのは薬味として毒抜くと考えられたからでしょうね。

実際、江戸時代の料理書なんかで見ます。タコの足には毒があるって。

スペインの柔らかいタコの謎

金沢のスナックパンチで対談する料理人・髙木慎一郎と歴史学者・三石晃生と、OPENSAUCE代表・宮田人司

髙木:でも、宮田さんと孫泰蔵さんと大蘿(たいら)淳司さんとスペイン行ったとき、タコふつうに茹でてそれで終わりでしたけど。めちゃくちゃ柔らかかったじゃないですか。(※)

※ スペイン・サンセバスチャンを中心としたこの食体験の旅で株式会社OPENSAUCE設 立の主旨が決定的になった。

宮田:あれ、なんでなんですか?

髙木:あれだけはいまだにわからない。

宮田:なにか特殊な水で炊いてんのか…

髙木:絶対、普通の水だと思いますよ。

宮田:めっちゃくちゃ柔らかいんですよ。

よくお茶で炊くとか言うじゃないですか。そんなの何にもしてなかった。

髙木:これ絶対何かやってますよ、蒸してんじゃないですか?とか話してて聞いたら、

「ううん、茹でてるだけ。」ってタコをびよーんてつかんでそのまますーっと鍋に入れて。

で、上がってきたやつ切ってもらったら、本当に柔らかいんです。

三石:向こうのタコって柔らかいんですかね。

宮田:タコが違うのかな。

髙木:その可能性もありますけど、にしたって柔らかすぎますね。

宮田:噛み終わる直前のガムくらい柔らかかった。

三石:それは柔らかいわ〜(笑)

髙木:あれはちょっとスペインで一番、印象的な一品かもしれないですね。

宮田:あのあと何軒か行って、タコ頼んだんですよ、あっちこっちで。それこそ茹でたやつにオリーブオイルと塩コショウみたいな。全部柔らかいんですよ。だからタコが違うのかもしれない。

髙木:だとしたら…しょうがないですね(笑)

宮田:あのタコ養殖したい。

三石:能登半島あたりで(笑)

髙木:タコって、生で輸入って聞いたことないですね。活ダコ輸入。

三石:うーん、確かに。でもあいつストレスに弱いからなあ、なにげに。

髙木:アワビも、あんまり長い間、一週間くらい水槽に飼ってると中に空洞ができるんですよ。

そうすると空洞ができてて、これは一般的にはストレスだと言われてますね。

三石:へえ〜!

髙木:で、基本的に水槽の中って、どんな魚でもそうですけど捕食しないですよね。

だから痩せてく一方。痩せてく所作の一つなのかなって思いますけども。

三石:鱧なんて最強じゃないですかね。あいつ生命力強いですから。

髙木:でも、鱧も、捕食はしないです。
うちの水槽でなかなかガッツあるのは、アブラメ。

クルマエビの水槽があって、そこからぴょーんてエビが跳ねて、大きいヒラメとかがいるところに落ちることがあるんですけども。

ヒラメは、目の前にクルマエビがいても絶対食べないです。アブラメは、「お?」と。さりげなく近づいてカポっといくんです。

宮田:そういえば思い出しましたけど、うちの店、水槽いらないですか?

髙木:でも、活きたものを…アワビやるときに要りますね。

宮田:いまふっと髙木さんの話とか聞いてて、アワビの話とか今の話聞いてて、うちいらねえのかなと思って(笑)

髙木:その発想なかったですね(笑)

髙木:でも、魚とか、ヒラメとかは活かしとく必要あんまりないと思ってて、やるとすればクルマエビとか貝くらいですね。あとタコ。

宮田:よく生簀に入ってるのってあんまり感心しないんですよ。

でも、今言ったような貝とかアワビのすりおろし…

三石:それ聞いたらね!

宮田:専用に水槽置いてもいいんじゃないかっていう。

板谷:すりおろすやつまで独自で作りたいよね(笑)

髙木:でも、確かに、うちでそのアワビのすり流しやる時に、おろし金でやったんですけど、あれフードプロセッサーでやったら早いかもしれないですね。

一同:(笑)

タコの洗濯機

髙木:修業時代の上司というか当時の料理長が、若手の頃にやらかした話で、とある系列店に行くと、洗濯機があるんです。

おしぼりとか洗う洗濯機は仲居さんさん用の洗濯機で、調理場の洗濯機は、魚調理する時に使うタオルとか生臭いんで専用のがあるんですけど、そこになぜか「タコ禁止」って書いてあった。

なんだろうな?タコ禁止って思ったら、タコ一匹二匹なら、活きてるやつを〆て塩でもんでばーっと洗うんですけど、10、20来るとイラッとくるどころじゃなく嫌になるんですね。

それをどうしたかっていうと、全部〆て塩でバーっと洗う前に洗濯機で洗って、塩ザーって入れてゴロゴロゴロゴロ回したっていうツワモノが一人いたと。

一同:(笑)

板谷:タコ漁をやってるところの外に洗濯機ありますよね。

髙木:結局、理屈と一緒なんですよ。問題は洗濯機か、タコ専用で洗うか。

だから、<タコ禁止>っていうのが貼られてた。

その人は本当に素晴らしい大先輩で(笑)

板谷: (PC見ながら)スペインのタコ調べたら、一個は玉ねぎと煮るっていうのと、洗濯機に入れてやわかかく…はならないよな。

あとは、内緒だけど一ヶ月間冷凍するっていうのが書いてある(笑)

宮田:ああ、細胞壊すんですか。

板谷:どれが本当かわかんないけど。

髙木:でもその、冷凍させるっていうのはもしかすると水ダコとかでやると面白いかもしれない。酢ダコってけっこう固いじゃないですか。

あれ一回冷凍して、酢ダコにしたらどうなんですか?

三石:やってみましょうか。

髙木:やってみますか。

三石:江戸時代の人間に冷凍庫与えたら相当、面白がってもっとやったと思いますけどね。

髙木:ところで江戸時代はタコは食ってたの?

三石:食べてます、食べてます。

板谷:そうだよね。北斎の春画にタコ書いてあるもんね。

三石:そうそう、「鉄棒ぬらぬら」っていうふざけたペンネームで描いてる。

江戸に関していえば、江戸初期頃の料理物語って料理書にタコのレシピが出てきてます。江戸の人は、江戸前で採れるものはだいたい食べてます。イカはあまり好きじゃなかったみたいだけど。


番外編的タコの意外な話。生態から調理法まで、話はどこまでもつきません。
次回は、タコの冷凍の話から派生した、「氷」の話です。
日本人はいつから氷を使っていたのか?お楽しみに!