2020.07.03

御馳走帖【私の食のオススメ本】

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  • 書名:御馳走帖
  • 著者: 内田百閒
  • 発行所:中央公論新社
  • 発行年:初版1979年

2015年の筆者メモ
『「御馳走帖」中央文庫版を読み直す。おからを肴に三鞭酒(しゃんぱむ)を飲む百鬼園先生も文章も素敵だ。ちなみにおからは調理仕立てで銀杏がはいる。醤油は一切使わず、白いまま。これにレモンを搾る。そして・・・』

夏目漱石門下になった百閒は芥川龍之介、鈴木三重吉、小宮豊隆、森田草平と親交を深める。仲間内でもその食い意地は評判だった。

文庫のカバーに「朝はミルクにビスケット、昼はもり蕎麦、夜は山海のの珍味に舌鼓をうつ、ご存じ食いしん坊百閒先生…」と書かれている。

また、潰れてしまうのだが岡山の小さな造り酒屋が生家で、育ててくれた祖母に学校(岡山の第六高等学校)を卒業するまでは禁酒を命ぜられていた。

そんな百閒が綴る文章なので品良く、頑固さもにじむユーモラスさで、気が滅入る時に読むには持って来いだ。

百閒は法政大学のドイツ語教師をやめ随筆家になるのだが、空襲で家族と焼け出され貧乏になる。たぶんその頃のことではないかと思うが「芥子飯」という話が書かれている。

芥子飯とはカレーライスのことだ。仕事の帰りの電車賃として取っておいた十銭で、ついカフエーの十銭カレーを頼むが、店の女給が立派な風体を見てビールを勧めて来るので困惑する話。

幼年期の話や、前述の仲間たちとの食膳の楽しみを綴る中にも、戦中の窮乏生活を食の中から切なく懐かしく思い出す百閒先生。

黒沢明の映画で「まあだだよ」があるが、主人公が内田百閒先生だ。百閒の教え子として所ジョージが好演した。

昭和21年に恩師の健康長寿を願い、教え子たちが始めた集まりから17回目の「摩阿陀会」で百閒が教え子たちに囲まれて楽しい時間を過ごし、倒れて亡くなるまでの話だけれど、この映画を見てから本書を読むと、内田百閒も書かれている食べ物たちも、もう少し近くなるのではないかと思う。

WRITER Joji Itaya

出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。

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