2022.08.11

A_RESTAURANT Imaginative liquid ( Mocktails ) July . 2022

Pairing要素を前提にしつつ、料理や使われている素材などをフックに、産地や風土、歴史や文化など連想されるものをグラスの中で表現する 1杯の” 作品 “としてのドリンク ” Imaginative liquid “

音楽や映画、カルチャーやアートなど様々なものからインスピレーションを受け、通常ドリンクでは使われないであろう”食材”や”植物”などからエキスやフレーバーを抽出。ミュージシャンが曲や詩を書くように。アーティストがキャンバスに描くように、表現方法の一つとしての” liquid “を作り出します。

一見、アーティスティックな感性や直感的に作られていそうな Imaginative liquid ですが、alchemy(錬金術)や mixology(科学的調合)といった科学的・理論的なアプローチで緻密な計算のもと開発しています。

本記事では、そんな Imaginative liquid の発想の起点や表現したかった想い、レシピやリキッド生成の技法を紹介します。

Intro : 雲丹 とうもろこし

Interlude : ピキージョ ブランダーダ

Drink : ドン・マスカラス – メキシコプロレス出身イタリア料理店店主

焦点 : 太陽の実

雲丹にはフックになる要素が多い。うま味、塩味、コク、潮の香などなど。これらの要素に合いそうなもので、さらにはこの時期の1杯目に適した材料としてチョイスしたのがトマトだった。

トマトのアミノ酸を雲丹のアミノ酸に重ね、塩味がさらに味わいを広げる。

ここでイメージしたものは海(雲丹)と太陽(トマト)。陽の光を一杯に浴びて真っ赤に育ったトマトで太陽を表現したい。

ドリンクとして輪郭を持たせるためにベースのトマトにセロリの青い香り、ライムの酸、料理との繋ぎの塩味としてアンチョビを使う。

真面目な解説はここまで。ここからは1杯目でゲストを僕のゾーンに引き込む仕掛けの解説。

キーワードとしての太陽。さらにはトマトとライム。イメージされるものはメキシコ。加えて、トマト、セロリ、アンチョビとくればイタリアが連想される。

そこで僕の頭の中で1人の架空の人物が生まれた。

”ドン・マスカラス”

メキシカンとイタリアンを融合させた料理店を営むメキシコプロレス出身の元プロレスラーである。彼の店の名物料理であるトマトを使った冷製スープにインスピレーションを受け、モクテルで表現する。

さも実在する人物や料理にインスピレーションを受けたかのように言っているが、これは全て僕の妄想である。

初めてきたゲストの「コイツ何言ってんだ?」と困惑した顔が目に浮かぶが、この妄想ストーリーで強引に僕のゾーンに引き込む。

ちなみにガーニッシュのライムピールはドン・マスカラスが現役時代必勝パターンとしていたムーンサルトからの逆エビ固めをイメージしている。

トップロープから宙を舞う姿は、多くのプロレスファンを魅了した。

大事なことなので改めて言わせてもらうが、これは全て僕の妄想である。

ドン・マスカラス

  • クラリファイドトマトリキッド – ”マスカラス” 30ml・・・※
  • ライムコーディアル 10ml
  • ウィルキンソン タンサン 10ml

< garnish >

  • ライムピール – ムーンサルト
  • マスカラスパウダー

リムにマスカラスパウダーを付け、砕いたカチワリ氷を入れ、材料を全て注ぎステア。

ライムピールを飾る。

※クラリファイドトマトリキッド – ”マスカラス”

  • トマト×3
  • セロリ1/2
  • 塩ひとつまみ
  • アンチョビソース 1tsp
  • レモンオイル 1tsp

トマトとセロリをざく切りにし残りの材料を入れブレンダーで撹拌。ロータリーエバポレーターで遠心分離させストレーナーで濾す

分離した繊維は一旦全て集め、バジル、オニオンチップを混ぜクッキングペーパーに薄く伸ばしディハイドレーターでドライにした後ミルサーで粉砕

粉砕したものが”マスカラスパウダー”

ライムコーディアルはグラニュー糖の浸透圧でエキスを抽出。レモングラスを漬け込み香りをインフューズ

※ミキサーのソーダはヨーロッパ系だと今回は角が立ちすぎるため、国内軟水系がおすすめ

※influenced by music : rega / mexico

Verse : うなぎ

Drink : 河童の川遊び – うなきゅう

焦点:一石二鳥

鰻にはきゅうり。逆にこれ以外選択肢あります?っていうくらい、きゅうりのドリンクにしか気持ちが向かなかった。

きゅうりの青い香りをベースにクリアなものに仕立てようと考え、GIN & soda の Mocktail に仕立てた。

きゅうりをメインに置いたものと、ミョウガや実山椒などをボタニカルに使用したもの。二つのNon_alcoholic GIN を蒸留して Mixした。

「鴨がネギ背負ってきた」ならぬ「かっぱがきゅうり片手に鰻捕まえてきた」を表現。

河童の河遊び

  • Non_alcoholic GIN – “河童” 10ml
  • Non_alcoholic GIN – “Japanese citrus GIN” 30ml
  • 山崎の水 – 発泡 fillup

< garnish >

  • スライスキュウリ

氷を入れたグラスに2つのNon_alcoholic GIN を注ぐ。

ソーダでフィルアップしスライスしたキュウリを飾る。

Non_alcoholic GIN – “河童”

  • サニーレタス 1/2
  • キュウリ 1本スライス
  • ミニトマト  4個
  • ジュニパーベリー 5g
  • 水 600ml

材料全てをフラスコに入れ低温蒸留(真空度40hPa / hot bath 35℃ / condenser -15℃ / 回転数 160rpm )

※ Non_alcoholic GIN – “Japanese citrus GIN”

柚子ピール、ミョウガ、実山椒などを蒸留した僕のシグネチャー的リキッド

Interlude : コゴジョス ア・ラ・ブラサ

Drink : SMOKY – ソロキャンプ

焦点 : 狼煙

料理からのインスピレーションでフックになる部分は炭の香りと酸。それと、何よりも一番キーなったものは、この料理を作った料理人Nono。

彼はこの7月を最後に新たな別の道を歩む。彼の作り出す料理は、科学的根拠に基づいた最新の技法を取り入れ、世界の文化や伝統を織り交ぜた、見た目の美しさ、見た瞬間・口に入れた瞬間の驚きや新たな発見があり、毎回こちらのイマジネーションをくすぐられるものばかりだった。

これまで彼と接して感じた、多くを語らない彼の料理哲学を勝手に解釈すると、求めているものはただただ”美味しい”だけじゃない。食事という毎日欠かさず行う当たり前の行為のなかで、歴史や文化、驚きや感動、作り手のこだわりや想いを感じて欲しい。

みたいな感じだと思う。(いや、ちょっとカッコ良すぎるな。小難しい調理がただ好きでやってただけかも)

Smoky, your not my sky
~ Cause my head is clear

All the time I’m free , in my life

レストランとはこうあるべき。みたいな煙たい固定概念を吹き飛ばす挑戦への狼煙をあげるRockな想いを込めました。 

※influenced by music : Char / Smoky

SMOKY

  • 白檀リキッド

※詳細は以前の記事:EAT2022 前夜祭 参照

  • クロモジGIN 
  • 純氷 – ジャストサイズでカット

※クロモジGIN

水1000mlに乾燥させたクロモジの枝20g、軽く潰したジュニパーベリー5gを一晩漬ける。

低温で蒸留する(真空度 40hPa / 回転数 180rpm / hot bath 35℃ / condenser -10℃ )

氷をロックグラスとジャストサイズでカットしてグラスに入れる。

リキッドを注ぎステア。

カクテルスモーカーとメスキートチップでグラスを燻煙で満たす。

Bridge : シュークリーム

Drink : 黄花 – 丸く柔らかく落ち着き

焦点 : 安堵

白身の魚やホタテなどが入ったシュー生地に、注射器をブッ刺してソースを注入する魚料理。

この行為を全テーブルに回って一人一人にやらされるサービスマンの手間(笑)を 改めて感じていただきたい。A_RESTAURANTのコースはshowでありLiveである。

シュー生地の小麦感やクリーム系のソースに対し、ドリンクに求めるものはほっと落ち着く、柔らかく黄色で心地よい陽の光のような味。
※度々出てくるが、僕は味を色合いや濃淡、音程や楽器で表現することが多い。

なので、柔らかいイメージの黄色い花をドリンクでそのまま表現する。

黄花

  • ドライエルダーフラワー 1g
  • ドライカモミール 3g
  • お湯 180ml
  • 五島の藻塩 微量
  • 自家製カリンシロップ 1tsp

〈garnish〉

  • 青いクッキー(葉脈/蝶々)
  • 黄色の花びらのエディブルフラワー

沸騰したお湯で3min抽出しストレーナーで濾した後、藻塩とシロップを溶かしグラスに40ml注ぐ。

ガーニッシュを飾る。

※青いクッキーは、バターや小麦粉などでクッキー生地を作るが、全卵を加えず、濃いめに抽出したバタフライピーを加え色付けし、シリコン型に流し、焼き色がつかないように低温でじっくり焼き上げる。

黄色い花の蜜に誘われて蝶々がとまっているイメージ。

Chorus : 4%の奇跡

Drink : 300%片想い – 離れて気づいたこの想い

焦点 : 刺激

霜降りの薩摩牛4%の奇跡には、脂に負けない濃厚な赤ワインをイメージしたモクテルを合わせたい。

ベースとなる葡萄はフレッシュだと少し時期が早く、品質を安定させる意味でもブドウジュースを使用。そこにスパイスやハーブの香りをインフューズさせ濃縮。

お肉に添えられた麻辣や実山椒の辛味に合わせ、唐辛子の辛味と、ワインのタンニンをイメージした緑茶のカテキンで赤ワインを表現した。

300%片想い

  • 300%濃縮ブドウジュース 40ml
  • 劇シブ緑茶 – 唐辛子インフューズ 3drop

※300%濃縮ブドウジュース

  • joker – raisin 500ml
  • フレンチタラゴン 1g
  • コリアンダーシード 1tsp
  • ブラウンカルダモン 1ヶ
  • マーガオ 5ヶ
  • 赤ワインイースト 0.025%
  • 酒石酸 0.02%

ブドウジュースにハーブとスパイスを加え蒸留。液量が1/3になるまで濃縮した1次側の溶媒にイーストと酒石酸を加え一次発酵させる。湯煎で加熱し殺菌・発酵を止める。

(アルコール計、糖度計を用いてABV1%未満であることを確認)

※ 劇シブ緑茶 – 唐辛子インフューズ

かなり渋い緑茶である PINK TEA sun rougeを抽出後冷却し唐辛子を3時間ほど漬け込む。

氷を入れたグラスに300%濃縮ブドウジュースを注ぎ、氷が少し溶けるくらい長めにステア。

(超濃縮ジュースなので溶けた氷で加水するイメージ)

劇シブ緑茶をドロップする。

Interlude : 口直し

Drink : なし

Solo : 龍の瞳

Drink : ニホンノコメ ビヨンドコメ - 日本の米は世界一

焦点 : 米の可能性 

前回に続いて、お米のドリンク。華やかな香の日本酒をイメージしたニホンノコメビヨンドコメ。

※詳細は前回の記事を参照

Outro : 白桃 /   石垣島パイン / 鏡青梅

Drink : B-8 SMASH – 夕暮れモヒート

焦点 : エモめの夏

白桃を使ったデザートを試食した瞬間に感じたものはエロティシズム。

エキスじゅわーな感じがなんとも卑猥に感じられ、性への好奇心や期待感を表現したい。
そこで直感的に思いついたものが、ダークラムを用いた大人なモヒート。

太陽の下で飲む爽やかなモヒートではなく、夕暮れから夜に移り変わるタイミングで、バルコニーで寝そべり抱き合っている画が浮かぶ、少し粘性を帯びた大人の関係をイメージ。

B-8 SMASH

Bacardi 8 の smash cocktail の意

  • B-8 シロップ 20ml
  • Fever tree soda  fill up
  • クラッシュアイス 適量
  • イエルバブエナ(キューバミント)適量

※B-8 シロップ

  • Bacardi 8  450ml
  • パッションフルーツ 6ヶ(実取れ150g)
  • キャラウェイ 1g
  • ローズヒップペタル 0.3g
  • グラニュー糖 液量の82%

グラニュー糖以外の材料を鍋に入れ加熱しアルコールを飛ばし、予熱でグラニュー糖を溶かしてボトリング。

グラスにイエルバブエナを入れシロップを注ぎぺストルで数回軽く押す。

クラッシュアイスでグラスを満たしソーダを注ぎビルド。

飾りのイエルバブエナを添える。

甘い香りと粘性がさまざまな思惑や欲望が交わる。このまま時が止まればいいと思う夜の始まり、思い返せば刹那的な1ページとなるエモーショナルな夏の思い出…そんなシーンを表現した1杯。

※influenced by music : Lucky Kilimanjaro / エモめの夏

元音響エンジニアのバーマン。
外食はコンサートと同じ。料理やドリンク、空間やサービスで楽しいショーを体験する時間。ステージを彩るドリンクで、ショーの一翼を担う。