金沢・片町のA_RESTAURANTでは、コースの料理のそれぞれに、ノンアルコールドリンクのペアリングをご提供しております。
バーマンによる独創的な発想から生み出されるA_RESTAURANTのノンアルコールペアリング。
本記事では、固定概念にとらわれず、他では類をみないドリンクたちのペアリング要素やレシピ、発想や思考の一部を解説いたします。
今回は、2022年1月のA_RESTAURANTディナーコースメニューと、ペアリングドリンクのレシピをご紹介します。
Intro : 松竹梅
Pairing Drink : CUE
焦点 : 始まりの合図
メニュー名を見てあのメロディーと某軍団が思いかんだのは僕だけではないはず。
あのCMになにか掛けたドリンクにしようかとも思ったけど、新年スタートの1杯目からネタに走るのもいかがなものか…ということで、1杯目はスタートに相応しい華やかなお花のドリンクを合わせる。
竹筒のなかに本鮪が2段入っており、上段はわさびと梅、下段は松の実ソースで召し上がっていただく。
ドリンクの乳酸菌発酵からくる酸味や甘みが、マグロの鉄分や梅などの味付けと相性がいい。
CUE
グラスにクラッシュアイスを適量詰め、発酵させた自家製コンブチャを40ml注ぎ、エディブルフラワーを飾る
- グレープフルーツ(果肉)× 1
- オレンジ(果肉)× 1
- ドライラベンダー × 3g
- レモングラス × 5g
- バイマックル × 0.5g
- 水 × 1200ml
- グラニュー糖 × 120g
- 自家製コンブチャベース+スコビー × 液量の10%
カットしたフルーツの果肉とハーブ類を保存瓶に入れ、水を加えて水出し紅茶のように2日間ほど冷蔵で抽出。
鍋に濾して一煮立ちさせ(殺菌の意味もあるが、沸騰させると香りが飛ぶので数秒で)火を止めてグラニュー糖を加え溶かす。
ポリカーボネートのカップに注ぎラップをして氷水につけ急冷。冷えたら保存瓶に注ぎ、液量の10%の自家製コンブチャベース(2回目以降は前回作ったもの)とスコビーを加え、ペーパーなどで封をして空気を通しつつゴミが入らないようにし2-3日室温で発酵させる。
Interlude : 帆立
Pairing Drink : チリ本搾り
焦点:6/8 + 3/4 拍子
ヒモと肝を添えて軽く火を通した帆立をサルサソースで召し上がっていただく一皿。
サルサソースの酸とハーブの香りに被せるようなドリンクを合わせたい。
ブラジルのカイピリーニャやキューバのモヒートを連想させるモクテルで、南米大陸ギュって絞ったらたぶんこんな味しそう(意味不明)というイメージ。
チリ本搾り
- 自家製ライムコーディアル 10ml・・・作り方は11-12月ペアリング記事参照
- Fever Tree premium soda 30ml
- スパイスド トマトリキッド 1tsp・・・※
- スペアミント 適量
- クラッシュアイス 適量
- 自家製ドンタコスパウダー 適量・・・※
※・・・スパイスド トマトリキッド
- トマト 6ケ
- 塩 4つまみ
- ドライパセリ 2tsp
- チリパウダー 1tsp
- フライドオニオン 20g
- アボガドオイル 1tsp
- レモンオイル 1tsp
- 白ワインビネガー 2tsp
- バルサミコ 1/2tsp
全ての材料をブレンダーにかけ攪拌。遠心分離にかけ濾す。(5℃/3800rpm/15min)
遠心力で分離したトマトの繊維質をディハイドレーターでドライにし、ミルサーで粉砕したものがドンタコスパウダー。
グラスにライムコーディアルを注ぎミントを加え、ペストルで軽くつぶして香りを移す。
クラッシュアイスを詰めソーダを注ぎ軽くステア。トマトリキッドをバースプーンを使ってフロート。ミントを飾り、ドンタコスパウダーを少量浮かべる。
Verse : あん肝 / Interlude :鯛とセロリラブ
Pairing Drink : カミツレGIN
焦点 : 黄色の香
あん肝の料理と、鯛にプロシュートとかつおの出汁餡をかけた2つの料理。
どちらも柔らかくスッと黄色い香りが抜けるドリンクが合いそうだったのでカモミールをメインボタニカルにフレーバーウォーターを蒸留した。
低温で蒸留することにより特有のオフフレーバーを抑え、僕の欲しい部分、トゲがなく丸く包む黄色い香りが、しっかり主張してくるけど邪魔にならない求めた香りを抽出できた。
ショットグラスに注ぎ”GINのショットです”と提供し、戸惑いながらも飲んでみると柔らかい味わいで混乱するゲストを見てニヤニヤする、僕の性格の悪さが露呈した1杯。
カミツレGIN
- ドライカモミール 5g
- ジュニパーベリー 4g
- フェンネル 1/2tsp
- バイマックル 1g
- レモングラス 5g
- 浄水 800ml
ジュニパーは軽く潰し他の材料と一緒にフラスコに入れ、35hPaまでなるべく早く気圧を下げながら蒸留していく(一気に気圧を下げると突然沸騰して爆発する)
真空度 35hPa / 回転数 220rpm / hot bath 35℃ / condenser -20℃
Bridge : オマール海老
Pairing Drink : 隣の芝生は青い
焦点 : 羨望
※料理/ドリンクの詳細はクリスマスディナーの記事を参照ください。
horus : びえい牛
Pairing Drink : オニポテセット
焦点 : セットメニュー
酒粕を食べて育った北海道のブランド牛のびえい牛。出汁を掛け流しサーロインの余分な脂を落としてセップ茸のソースや卵黄を絡め、トリュフやのと115とともに味わう。
料理の方に様々な要素があるので、さらにドリンクで別の要素を足すと舌の上が大渋滞おこしそうなので、要所だけおさえて一歩下がったものを作りたい。
一歩下がったもの…メインはあくまで別にあって…サイドメニューや!
という発想の元、某ハンバーガーチェーンの人気セットメニューをドリンクで表現してみた。
オニポテセット
- じゃがいも 4ケ
- バター 10g
- クミン 0.5g
- 黒胡椒(ホール)0.5g
- フライドオニオン 5g
- ローリエ 1枚
- 塩 2つまみ
- 水 1000ml
- レモンピール(garnish)
- しょうが絞り汁
じゃがいもを茹でて皮を剥きサイの目にカット。鍋にバターを溶かしじゃがいもがきつね色になるまで焼く。クミン、潰した黒胡椒を加え香りを立たせてから水を加え沸騰させる。
フライドオニオンとローリエを加え蓋をして中火で20min煮込む。
煮込み終わったら鍋の中でじゃがいもを軽くマッシュし容器に移し流水で粗熱をとる。
粗熱がとれたらフラスコに移し蒸留。
真空度 60hPa / 回転数 200rpm / hot bath 45℃ / condenser -10℃
ボトリングしておいた蒸留水30mlをグラスに注ぎしょうがの搾り汁を1Drop加えレモンピールを飾る。
nterlude : 口直し
Pairing Drink : なし
ペアリングドリンクなし
Solo : 龍の瞳
Paring Drink : みりん
焦点 : 江戸のリキュール
釜で炊いたご飯と金沢山椒の赤だし、下仁田ネギと鴨の照り焼き、おつけもの…
いやここだけでも立派な晩御飯(笑)
おそらく一番合うドリンクは温かい番茶だと思いますが…最近力を入れて研究している麹を使ったドリンクを合わせてみる。
ネギ、照り焼き、赤だし。これらをつなぐ役割として米麹の甘みは最適だと思う。
ほんのり甘いくらいにしたいのでお米を加えず自家製の米麹と水だけで撹拌し発酵。なので甘酒やライスミルクというよりみりんに近いイメージ。麹菌の持っている甘味だけで勝負する。
みりん
- 自家製米麹
- 水
- クエン酸
- 純氷
蒸したお米に種麹をふりかけ全体に種麹を付着させ 2日間発酵機で発酵させる(温度 40℃ /湿度 80 %)
お米全体に白カビ(麹菌)が繁殖すれば米麹の完成。
自家製米麹と水を 1:1で混ぜ合わせ、ブレンダーで撹拌する。
撹拌したライスミルクをヨーグルトメーカーで 6 ~ 8 時間発酵させる。
味を確認(特に甘み)をし湯煎しながらクエン酸を加えバースプーンでゆっくり撹拌。
急冷して冷蔵庫で半日落ち着かせる。
コーヒードリッパーで濾してボトリング。
Outro : チョコレート バナナ / トリュフ パロミータ・フォアグラ
Pairing Drink : 書き初め
焦点 : 一年の抱負
黒い方がバナナで白い方がチョコレートという、見た目とのギャップに混乱する一皿目。
“黒リンゴ”という魔女が作りそうな謎の食べ物が使われる二皿目。
2つのデザートにはクリスマスディナーでも登場したモクテルをアレンジし、書き初めの墨汁を表現。
今年もゲストに驚きや感動を与えられるドリンクを作っていきたいという僕の抱負を書き初めで表しました。
書き初め
- ウォッシュミルク 80ml
- 1883 チョコレートシロップ 2tsp
- 1883 バニラシロップ 1tsp
- 竹炭パウダー
- マシュマロ(glass decoration)
白いミルクに炭を溶かしてもグレーになるので表現したい“黒”を表すために、ミルクからタンパク質を除去し透明にしてから炭を溶かす。
元音響エンジニアのバーマン。
外食はコンサートと同じ。料理やドリンク、空間やサービスで楽しいショーを体験する時間。ステージを彩るドリンクで、ショーの一翼を担う。