2021.05.19

A_RESTAURANTノンアルコールペアリング 2021年5月

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金沢・片町のA_RESTAURANTでは、コースの料理のそれぞれに、ノンアルコールドリンクのペアリングをご提供しております。

バーマンによる独創的な発想から生み出されるA_RESTAURANTのノンアルコールペアリング。
本記事では、固定概念にとらわれず、他では類をみないドリンクたちのペアリング要素やレシピ、発想や思考の一部を解説いたします。

今回は、2021年5月のA_RESTAURANTコースメニューと、ペアリングドリンクのレシピをご紹介します。

Intro : カラビネロス

Paring Drink : 笹貫の太刀

焦点 : 薩摩藩

カラビネロスという海老を缶に入れた一皿目。海老の下にはレバーと新丸十(サツマイモ)のペーストが敷かれており、うま味も味わいも濃厚。ここには程よい酸味を持った爽やかなドリンクを合わせる。
新丸十の由来は丸に十の文字。つまり薩摩藩の家紋から来ている。歴史好きな僕としてはこの薩摩藩に焦点を当てたいと考えた。

薩摩には伝説の刀”笹貫”がある。鍛冶職人が失敗作だと山に捨てた刀。後日見にいくと捨てた刀が土に埋まり直立しており、周りには細く裂かれた無数の笹の葉。風で落ちた笹が刀に触れ綺麗に裂かれていたという伝説の刀。笹貫をイメージして、同じく笹のようなフレーバーのパンダンリーフをベースに使う。爽やか=炭酸ではなく、笹の青い香りで爽やかさを演出する。

そして西洋の文化や武器などいち早く取り入れた薩摩藩のイメージから、いかにも外国っぽいフルーツ。今の時期だとパッションフルーツ。酸味も甘みもあり狙い通りだ。

パンダンティー(約5杯分)

  • パンダンリーフ(ドライ)× 4g
  • 水 × 250ml
  • シナモンスティック × 1本

笹貫の太刀

  • パンダンティー × 50ml
  • パッションフルーツジュース(フレッシュ)× 10ml
  • 1883 Orchid syrup × 3Drops
  • 笹の葉(garnish)
  • レモンピール(garnish)

パンダンリーフとシナモンスティックを入れた鍋に、お湯を注ぎ弱火で5min煮出す。

濾して急冷してボトリング。

パッションフルーツは半分にカットしスプーンで中身をかき出す。ストレーナーで種を取り除きボトリング。

パンダンティー、パッションフルーツ、オーキッドシロップをプレミックスし、氷を入れたグラスに注ぐ。

笹の葉のガーニッシュを飾る。

Interlude : Tamal ラムの胸腺 / 富山産岩牡蠣 アヒ・アマリージョ

Paring Drink : 凝縮マスカット

焦点 : 凝縮

作り方は4月のコース”フラン・ラ・フランス”と同様

ラム肉のアフターフレーバーをリフレッシュする目的と、牡蠣の旨みを引き出す意味合いで、前回より冷やして提供したいので仕立てを変更。

細かく棒状に刻んだレモン・ライムのピール、クラッシュアイスを入れたグラスに、自家製コンブチャを注ぐ。

Interlude : 豚 オレンジ

Paring Drink : コンソメパンチ ダブルマスタード味

焦点 : 野菜のうま味

豚の塩煮にオレンジの酸味。合わせるならマスタード。辛みでなくマスタードの香りを合わせたい。マスタードの香りを壊さない、ドリンクのベースとなるもので、豚の脂に合うものは…優しく丸い印象の春キャベツでコンソメを取る。

根菜と葉野菜由来の野菜出汁で豚の甘みを引き立て、フレッシュレモンジュースを加え味を引き締める。

キャベツコンソメ(約10杯分)

  • ベルギーエシャロット × 2
  • セロリ × 1/2
  • 春キャベツ × 1/2
  • 水 × 500ml
  • 塩 × 2つまみ
  • ディジョンマスタード × 1tsp
  • イエローマスタード × 1tsp

コンソメパンチ Wマスタード味

  • キャベツコンソメ × 50ml
  • レモンジュース × 1/2 tsp
  • キャベツの花(ガーニッシュ)
  • ライムピール(ガーニッシュ)

みじん切りにしたエシャロットを5分程水にさらして辛み・エグ味を軽く抜く。水気を取り、鍋でゆっくり炒め甘みを引き出す。炒めたらセロリ、キャベツ、水、塩を加え、沸騰後蓋をして弱火で15分程煮る。野菜のうま味がしっかり溶け出たら火を止め濾し器を使って濾す。濾し器の中の野菜はマッシャーで潰してうま味を絞り出す。

濾したコンソメに2種のマスタードを溶かし込み、氷水を張った大きな容器で急冷する。冷えたらそのまま一晩冷蔵庫で寝かせ、マスタードの香りを移し、落ち着かせる。

翌日、ストレーナーで濾してボトリング。

キャベツコンソメ、レモンジュースをプレミックスしグラスに注ぐ。グラスの縁にキャベツの花のガーニッシュを飾る。

Interlude : 豚 オレンジ

Paring cocktail : ベリー&ビターズ

焦点 : 苦味

ワインを使わずワインのようなカクテルを作って欲しいというソムリエからの無茶振りにより、ここではアルコールペアリングのカクテルも用意。

以前、ハイビスカスのコンブチャを発酵させすぎて重い酸味と渋みが出て失敗したことがあった。コンブチャとしては失敗作だが、あの酸味と渋みをベースに手を加えれば赤ワインのようなカクテルが作れそうだ。

料理には豚肉の旨みや脂の甘みを引き立てるオレンジが使われている。ドリンクでこのオレンジに酸と苦味を合わせ更に豚肉を持ち上げる。オレンジに合わせる苦味といえば… カクテル好きなら誰もが思い浮かぶであろう。カンパリだ。

樽で熟成させたようなニュアンスを持たせるためアンゴシュチュラビターズを。食材との橋渡しとして自家製オレンジビターズを少量加える。

ベリー&ビターズ

  • 自家製ベリー ハイビスカス コンブチャ(通常より更に2-3日発酵させたもの)× 50ml
  • スミノフウォッカ × 10ml
  • カンパリ × 2tsp
  • アンゴシュチュラビターズ × 1dash
  • 自家製オレンジビターズ × 1dash

Bridge : 甘鯛

Paring Drink : ムクワス

焦点 : 安堵

甘鯛にパンチェッタを巻き、ハムのスープにXO醤 。別添えでパイナップルと蓼(たで)。スープのXO醤とパイナップルの酸味が中華風なところに辛みのある日本のハーブ蓼。和の魚の王道甘鯛にイタリアのパンチェッタ。やはりウチの料理長はおとなしく綺麗な枠に収まる器じゃないなと感じる一皿(笑)

現段階で要素てんこ盛りだが、僕もドリンクでさらにかき乱してやる。料理長が和・洋・中の連合軍で攻めるなら僕はインド料理で加勢する。インド料理屋のレジの横に置いてあるカラフルな謎の食べ物。アレをドリンクで表現する。

あの謎の食べ物はムクワスという名で、爽やかだがクセの強いフェンネルシードを食べやすいように砂糖でコーティングした、言わば焼肉屋で帰りにもらうミントガム的な役割だ。

料理の辛みの部分を落ち着かせる意味でも温かいドリンクに仕上げる。

自家製ドリンクで重要なのはバランスだと思う。欲しい部分の要素だけを使ってもドリンクにならない。苦味や甘み、様々な要素が含まれている中で欲しい要素が頭ひとつ出ていてるからこそより引き立つ。

アーティチョーク、セルバチコで苦味を。焦がした赤パプリカから甘みを引き出し、味の中央にフェンネルシードの爽快感を置く。

コーティングの砂糖のイメージで、自家製レモネードシロップで漬け込んだ甘いスライスレモンを加える。

このペアリングで和・洋・中・印の合従軍が成り立ち、どんな美食家も唸らせてみせる。

※『キングダム』のアニメ放送が再開され合従軍の件はもろに影響を受けている。

ムクワス(約10杯分)

  • アーティチョーク × 2
  • セルバチコ × 50g
  • 赤パプリカ × 1
  • 水 × 500ml
  • ワイルドカルダモン × 2カケ
  • コリアンダーシード × 1tsp
  • フェンネルシード × 2tsp
  • クローブ × 3ヶ
  • 自家製レモネードシロップ漬けスライスレモン

赤パプリカは1/8カットにし表面を焼いて甘みを引き出す。下処理し適当なサイズにカットしたアーティチョーク、セルバチコを加える。

カルダモンとコリアンダーシードはすり鉢で軽く潰し、その他のスパイスと共に鍋に加える。水500mlを加え沸騰後、弱火で10min煮る。

濾して急冷し必要杯数分づつ真空パックして冷蔵保存。(真空度85%)

75℃のお湯でパックごと湯煎し、自家製レモネードシロップのスライスレモン1枚を入れたグラスに50ml注ぐ。

Chorus : ふらの和牛

Paring Drink : 山崎水割り

焦点 : 硬度

メインの肉料理だが、コテコテのステーキなどとは異なり、シャキシャキの野菜を美味しく食べる肉料理というイメージが強い。使われているソースもしっかり酸味があるので、ドリンクも野菜を美味しく味わうためのスッキリしたものを合わせる。

これまで、白身魚などに合わせることが多かった自家蒸留のノンアルコールジンは、柑橘やミョウガなどのボタニカルに。爽やかな印象が強いので、シャキシャキな野菜との相性は抜群に良い。この爽快感は当然肉の脂も綺麗に引いてくれる。

炭酸からくる酸味の爽快感を加えたいが、ソーダだと炭酸のプツプツ感が強すぎて、料理の印象をかっさらってしまう感がある。
そこで使用したのが山崎の水(発泡)。天王山の麓、京都は山崎の水でトゲのないまろやかな印象の炭酸水なので、野菜のシャキシャキ感をより引き立ててくれる。

天王山=コースのメインに相応しい水だ。

かの武将のように、僕もこの山崎の戦いに勝利し、天下を取れるよう日々精進したい。

  • 自家蒸留ノンアルコールGIN -Japanese citrus flavor- × 15ml
  • SUNTORY / 山崎の水(発泡)× 15ml
  • キューブアイス × 1
  • 能登大谷塩 少々

アイスキューブを入れたグラスに自家蒸留ジンを注ぎ山崎の水でビルド。

氷の上に塩を軽く乗せる。

Solo : 魚介のリゾット

Paring Drink : smoke cheese liquid

焦点 : 粉チーズ

濃厚な魚介のリゾットには粉チーズを振りかけて食べたい。その粉チーズをドリンクで表現する。

もしかしたら理科の実験なんかでやったことある方もいるかもしれない、あの方法で。

チーズをそのまま使うと風味が強すぎる。更には、食材に合わせた別の要素を加えやすいよう乳製品としての要素だけ残したクリアなベースとするため、ミルクから脂肪分とタンパク質を除去したウォッシュミルクをベースとした。

そこに魚介と相性の良いアニスの香りをインフューズさせた上に、燻煙を液体に軽く溶け込ませチーズの熟成した感じを纏わせてる。

ミルクウォッシュ(約4杯分)

  • 成分無調整ミルク × 200ml
  • レモンジュース × 4tsp
  • スターアニス × 1g

スモーク

  • ウイスキーオークチップ

ビーカーに牛乳を入れ、お湯を張った鍋で湯煎。タンパク質の熱変性しやすい65℃くらいに温めレモンジュースを少量加えながらゆっくり混ぜていく(高温だと風味が飛ぶので温めすぎない)。

タンパク質と脂質が分離したらアニスを加え更に温め香りを移す(この際もゆっくり混ぜる)。コーヒーフィルターでゆっくり濾して急冷しボトリング。

耐熱皿にスモークチップを適量敷き、バーナーで炙りビーカーを被せる。ビーカーに薫香が着いたらウォッシュミルクを注ぎ、蓋をして大きく回し薫香をミルクに移す。

グラスに30ml注ぐ。

※レモンジュースはこの量より少なくてもウォッシュできるが、酸味のバランスを取るため多めに使っている。

※ウォッシュしたミルクにはホエー成分が残るため激しく振ると泡立つ。泡立たないようにゆっくり大きく回して燻煙を液体に溶け込ませる。

Outro : エルダーフラワー パッションフルーツ

Paring Drink : ココダモン

焦点 : 大智は愚の如し

デザートを食べ終わった後、つまりコース全てを終えた後。なんなら帰りのタクシーに乗った頃に”あー美味しかった”と今日のディナーを思い返す、時限爆弾のようなドリンクを最後に合わせたい。

ファーストインパクトの強いドリンクは一口目こそ美味しく感じるが、案外後半は印象に残らない。悪くいえば途中でその味に慣れてしまって惰性で飲んでしまうことがある。作りたいものはその真逆。主張こそ少ないがその奥でしっかりと存在感を示すものを作りたい。一見何かよくわからんと思わせておいて後々効いてくるものを。

ヤギのミルクやヨーグルトといった乳製品を使ったデザートなので植物性のオイルを感じるドリンクを合わせる。

ココナッツが合うと思うがそのまま使うとインパクトが強すぎて、”時限爆弾”にはならない。そこで、ココナッツウォーターを蒸留し表面的なアタックを削ぎ落としつつ、サスティン(余韻)に長フレーバーとオイリーさを残す。削ぎ落とした部分にはリンゴの皮とカルダモンの土っぽくも爽やかなフレーバーを差し込む。

この差し込んだフレーバーをつなぎに、リンゴ・カルダモンと相性の良いピスタチオ特有のフレーバーとオイル感を更に加える。

アタックはカルダモンとピスタチオが顔を出しデザートの味わいを広げてくれる。その時は気づかないが、舌の細胞に忍び込んだココナッツのオイルがいつまでも心地よく居座る。

曲が終わってからも頭から離れない抜けの良いスネアドラムの音(もしくは愛する人が残したシーツの温もり)のように。

ココナッツフレーバーウォーター(約12杯分)

  • ココナッツウォーター × 700ml
  • リンゴの皮 × 2個分
  • ワイルドカルダモン × 3ヶ

ココダモン

  • ココナッツフレーバーウォーター × 40ml
  • 自家製ピスタチオシロップ × 2tsp
  • ローズマリー( garnish )
  • ミントチェリー(garnish)

リンゴの皮とカルダモンをココナッツウォーターで水蒸気蒸留する。

カクテルグラスに注ぎピスタチオシロップをバースプーンで静かに沈める。

マドラー代わりのガーニッシュを飾る。

あとがき

今回のノンアルコールペアリングでは幕末の薩摩藩や天下取りの大戦、秦の始皇帝まで出てくる個人的な趣味嗜好が前面に出過ぎた感もあるが、そんなところからインスピレーションを受けてドリンクを作っているのかと少しでも楽しんで頂ければ幸いです。

賛否あるかと思いますが…”蓼食う虫も好き好き”ってことで(笑)

※営業時間時短要請により、予約時間によって一部コース内容を変更しております。

元音響エンジニアのバーマン。
外食はコンサートと同じ。料理やドリンク、空間やサービスで楽しいショーを体験する時間。ステージを彩るドリンクで、ショーの一翼を担う。

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