- 書名:女神のサラダ
- 著者:瀧羽麻子
- 発行所:光文社
- 発行年:2020年
たまたま2019年の小説宝石に掲載された『月夜のチーズ』という作品を目にしていて、このシリーズを読んでみたいと思っていた。農業に関わる人たちの短編小説集。
全国各地を舞台に農業に関わりがなかった様々な年代の女性が、農業に関わる悩みと思いに向き合いながら農業を仕事としていく姿が描かれている。
それぞれのタイトルには取材した実在の農場や農園が架空の名前でサブタイトルのように書かれている。文中ではその地域の方言も使われ、リアリティーが増す。(実際の取材先は巻末に記載されている)
- 『夜明けのレタス』群馬県昭和村・高樹農場
- 『茄子と珈琲』岡山県備前市・横尾農園
- 『本部長の馬鈴薯』北海道京極町・新美農場
- 『アスパラガスの花束』長崎県諫早市・いさはや農業大学校
- 『レモンの嫁入り』和歌山県広川町・織田果樹園
- 『月夜のチーズ』岩手県葛巻町・森牧場
- 『オリーブの木の下で』香川県小豆島町・高山オリーブ園
- 『トマトの約束』石川県小松市・須知トマトファーム
迷っている女性が居場所を見つける、地方や農家をテーマにした映画を見ているような気がしてくる。そしてどんなに近代化をしても農業の根底は『人』なのだと思わせる。丁寧な取材とその視点が文字に生きている。
出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。