2023.03.01

ソムリエが出会った
16の極上ペアリング
【私の食のオススメ本】

  • 書名:ソムリエが出会った16の極上ペアリング
  • 著者:石田博
  • 発行所:東京堂出版
  • 発行年:2019年

1969年生まれの著者、石田博氏(以下敬称略)は1990年「ホテル・ニューオータニ」に入社後、「トゥール・ジャルダン東京」に配属。後に「ベージュ アラン・デュカス東京」総支配人、「レストラン アイ(現KEISUKE MATSUSHITA)」シェフソムリエを務めた。数々のソムリエコンクールでの受賞を重ね、2016年世界最優秀ソムリエコンクールファイナリストとなった。同年、今橋英明シェフ、平瀬祥子パティシエと「レストラン ローブ」を開業。2014年には黄綬褒章を受賞している。日本ソムリエ協会副会長。

本書はコロナ禍に突入する直前の2019年末に出版された。石田博に憧れるソムリエやワイン好きは海外にもレストランにも行けず、悶々としながらこの「ソムリエの旅」日記を読んだに違いない。

イタリア、フランス、スペイン、オーストリア、ジョージア、南北アメリカ、オーストラリア。石田博が30年をかけて巡ったワインの産地で出会った<究極のペアリング>について書かれたのが本書だ。

「ペアリングの軸は地方料理とその土地のワイン。これを凌駕するものはないと信じています。」と石田博は言う。ならば、日本の食材で作った料理では外国のワインを飲む意味はないのか? 石田博は各章にある<ワイン豆知識>というコラムに和食ということでいくつかのヒントを書いている。

「(旨味は)日本独特な味覚表現です。和食が世界に注目されることで広まったと言えるでしょう。(中略)世界のソムリエたちは「UMAMI」をテイスティングで躊躇なく使い、そのワインを評価します。」

「40年ほど前は、和食にワインは合わないという固定観念があったといいます。(中略)今日、その観念は完全に過去のものとなっています。和食が世界で注目されることで、世界中のソムリエはどんなワインが和食もしくは和食のようなテイストや仕立ての料理と合うかを考え、実践するようになりました。(中略)そして上品な味付けの料理にはむしろ現代のワインはよく合うのです。」

本書に書かれたソムリエの<発見>の旅を読むことで、石田博が日本の各地、料理を問わずペアリングを行えるのかというある種の謎とその意味が素人である自分にも少し見えてくるように思えるのだ。

個人的に<シャンパーニュ ブラン・ドゥ・ブランにその地方特有のビスケットを浸して食べる>という話が面白く、そのペアリングはぜひ試してみたいと思った。主な本書のペアリングは以下の内容。おすすめ生産者とワインは本書で。

キャンティとTボーンステーキ ジュヴレ・シャンベルタンとマシュルーム、ベーコン、小玉ねぎ ポーイヤックと生牡蠣 カシィとブイヤベース コリウールとマルミット フルーリーと鶏肉 テンプラニーリョと乳飲み仔羊 グリューナー・フェルトリナーとカツレツ ウイラメット・ヴァレー ピノ・ノワールとサーモン レイダ・ヴァレー ソーヴィニヨン・ブランとウニ・・

WRITER Joji Itaya

出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。