金沢・片町のA_RESTAURANTでは、コースの料理のそれぞれに、ノンアルコールドリンクのペアリングをご提供しております。
バーマンによる独創的な発想から生み出されるA_RESTAURANTのノンアルコールペアリング。
本記事では、固定概念にとらわれず、他では類をみないドリンクたちのペアリング要素やレシピ、発想や思考の一部を解説いたします。
今回は、2021年1月のA_RESTAURANTコースメニューと、ペアリングドリンクのレシピをご紹介します。
アペタイザー:大王松
アペリティフ:鏡餅
お正月らしい縁起のいいアペタイザーに合わせ、ドリンクも縁起物の鏡餅をモチーフにしたノンアルコールのモクテルをご用意。
マティーニグラスの底に薔薇のシロップを沈め、ライスウォーターをフロート。
ダイダイを自家蒸留しミストでグラスにふりかけ、門松をイメージしたダイダイピールとローズマリーをグラスのフチに添える。
- 1883 ローズシロップ 10ml
- ライスウォーター 60ml
- 自家蒸留水(ダイダイ)mist
- ダイダイピール
- ローズマリー
ホロホロ鳥 モレポブラーノ
ペアリングドリンク:スパイスブレッド
焦点:パン
モレポブラーノ ー 唐辛子を使ったカカオのソース。本場メキシコではパンをつけて食べる習慣もあるそうで、今回ペアリングドリンクでは、煎った大麦とバターの香りで焼きたてのパンを再現し、レーズンやスパイスの香りもインフューズさせた。
モレポブラーノと合わせれば、刺激的で情熱的。ガットギターやボンゴの音色が鳴り響く。
- コリアンダー(ホール) 1tsp
- カルダモン(ホール)2ヶ
- バーリーマックス(大麦) 50g
- 水 1000ml
- バター 10g
- 小麦粉 10g
- シナモンスティック 1本
- ドライレーズン 10g
コリアンダー 、カルダモンをすり鉢で潰す。バーリーマックスを鍋で乾煎りし、風味が出たらスパイスを加えさらに加熱。水を1000mlを加え沸騰後弱火で10min加熱。
別の鍋にバターを溶かし小麦粉を加え加熱。別の鍋で加熱しておいた大麦の煮汁を濾して、溶かしバターに加える。シナモンスティック、ドライレーズンを加え弱火で5min煮る。
粗熱を取り冷蔵保存後ストレーナで濾して冷えて固まったバターを除去しボトリング。
提供時、鍋で温めグラスに30ml注ぐ。
ネギ 鱈 / ホッキ貝 2皿
ペアリングドリンク:レモンマスタード
焦点:旨味
ネギの甘みや貝の旨みには爽やかなハーブの香りがよく合う
レモンのような柑橘系の香りが欲しいが、レモンを使うと酸が立ってしまいバランスが崩れるため、レモンのような香りのするハーブを使用。淡白な鱈にアクセントとしてマスタードの風味を乗せ、塩味を加えるため揚浜の塩をスノースタイルで。
早朝から漁に出る海の男たちにゼヒ飲んでいただきたいモクテル。
- レモンバーム 7g
- レモングラス 4g
- フレンチタラゴン 3.5g
- お湯 400ml
- 生姜の搾り汁 1tsp
- イエローマスタード 1/3tsp
- ポメリーマスタード 1/2tsp
- 能登大谷塩 適量
- カットレモン(スノースタイル用)
ハーブの抽出時間は3min。急冷し生姜の搾り汁、マスタードを加えステア。一晩寝かせ、マスタードを沈ませ注射器を使い上澄みの液体だけ取り出しボトリング。
グラス半周を能登大谷塩でスノースタイルにしグラスに注ぐ。
フカヒレ椀
ペアリングドリンク:clear hot chili peppers
薬膳風の優しいお椀には固い刺激的なドリンクを合わせたいと思い、薬膳火鍋をイメージした唐辛子の蒸留水で優しく丸みのあるお椀と緩急をつける。
といっても、辛みの強いドリンクにしてしまえば、お椀の味わいを壊してしまうため、辛い香りだけを抽出。提供直前までしっかりと冷やし、温度で液体の硬さを表現。
見た目は無色透明な水だか、一口飲めば冷たさからくる硬さ、サンザシやナツメの丸さ。舌はピリピリとした刺激を一切感じないのに香りはしっかり辛い。印象と香りと味わい全てがチグハグで脳が混乱する。
ド頭から歪んだベースソロから始まる Red Hot Chill Peppers/Around The World をイメージ。
種を取った唐辛子 5g , ドライサンザシ 3g , ドライ棗 1コ , クコの実 3g , 胎菊 3g , お湯 750ml
30min浸漬し蒸留
アンコウ
ペアリングドリンク:りんご鍋
焦点:アミノ酸
アンコウ料理で誰もが思い浮かべるものといえばアンコウ鍋。
なので、ドリンクと合わせてアンコウ鍋にしてみる。
だし・醤油・味噌・塩…さまざまな鍋がある中、何をもって人は鍋と認識するか…きっと、くたくたに煮え溶けた野菜のうま味だと思う。溶け出した白菜のうま味と独特な香り。そこに鰹や昆布とは異なるアミノ酸を結びつけうま味を引き出す。りんごを使って。
- リンゴの皮と芯 1ヶ分
- リンゴの実 1ヶ分
- 水 600ml
- 白菜 1/4
- ニンジン 1/2
- レモンピール 1枚
- ホワイトペッパー 適量
りんごの皮と芯を水から沸騰させ、沸騰後弱火で10min加熱しペクチンを取り出す。
白菜をざく切りにし、鍋に入れしんなりしてきたらりんごの実とニンジンをすりおろして加え、蓋をして15min弱火で煮詰め、急冷し濾してボトリング。
提供時、湯煎で60℃に温めグラスに注ぐ。レモンピールで香づけしホワイトペッパーを少量振る。
能登牛サーロイン
ペアリングドリンク:バターコーン
焦点:燃焼
子供の頃、ファミレスでお子様ランチを食べる自分の向かいで、鉄板でジュージューいってるステーキを食べる父親が羨ましかった。肉の焼ける匂いとその横に添えられた焼き色のついたコーン。
香ばしく焼いたサーロインにコーンのドリンクをペアリングし、テーブルの上にあの頃憧れた父親のステーキを再現する。
- コーン缶 1ヶ
- バター 10g
- 小麦粉 10g
- クミン 0.5g
- ジャスミン 5g
- お湯 200ml
コーンの缶詰をザルで水をきり焦げ目が付くまで炒める。缶詰の水を張ったボールに焼いたコーンを入れたザルを入れマッシュする。
バターを鍋で溶かし小麦粉を加熱。マッシュコーンの汁を加え溶かし込む。粗熱をとりビーカーに移し冷蔵庫で一晩寝かせゲル状に固める。
クミン、ジャスミンを合わせ2min抽出。
クミンジャスミン70mlに対しコーンゼラチン7gを溶かし入れグラスに注ぐ。
MOCHI
ペアリングドリンク:蓮花茶
焦点:アジア
ベトナムのお菓子をイメージしたデザートには現地で飲まれているドリンクをアレンジ。
パンダンやコブミカンの香りが異国感を演出してくれる。
胎菊、パンダンリーフ、コブミカンの葉、サンザシ、リコリス、ダンデライオンをお湯で抽出。蓮の花を浮かべる。
元音響エンジニアのバーマン。
外食はコンサートと同じ。料理やドリンク、空間やサービスで楽しいショーを体験する時間。ステージを彩るドリンクで、ショーの一翼を担う。