- 書名:小松弥助 心のすし 森田一夫と仲間たち
- 監修:北國新聞社出版局
- 発行所:加賀屋
- 発売:北國新聞社
- 発行年:2019年初版
北陸に『小松弥助』ありと言われるすし店の大将・森田一夫氏の集大成としての本。和洋問わず、飲食店オーナーに手にされることをお勧めしたい。また、これから料理を学ぼうとされている人にもぜひ読んでもらいたい。
集大成と書いたが、1931年、昭和6年生まれの森田氏は90にして現役。「今日1ミリでもいいから進歩したい」と店に立ち、自分の技量に奢ることなく謙虚な心で、これでいいのか、もっと上があるはず、と森田氏言うところの「クエスチョン」を探し出して答えを見つける繰り返しを続ける。
際立つシャリのイカの握り、敬意を表して握るアラ、加賀の醤油のツメで供するハマグリ、餅のようにやわらかいアワビ、指まで焦がして焼くうなきゅう巻き、隠し味が生きるヅケ、小松弥助定番のネギトロ、ひと手間重ねたコウバコ、泳いでいるかのように握るコハダ、食感と甘味の甘エビ。
森田氏はこれらを創り出す秘密と手技を写真と言葉で惜しみなく公開する。そして一番大切な、すしに向き合う「心」を語ってくれる。
この本を読めば、食との向かい合い方、弟子を仲間と呼んで、そこから見つけ出す感性とアイデアが重要であることを学べる。
出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。