- 書名:「美食地質学」入門 和食と日本列島の素敵な関係
- 著者:巽 好幸
- 発行所:光文社
- 発行年:2022年
「和食の基本となる出汁が、プレート運動による地殻変動や火山活動が山地を形成したことで成立した」といわれてもねえ、なのだが、読後は納得しかない(対抗する知識は皆無)。
日本の素晴らしい食材や料理が育まれるには「地球や日本列島のダイナミックな営み」が影響しているというのが本書だ。マグマ学者で健啖家の著者が本職のマグマ学に加えて「美食地質学」というものを考究した内容がぎっしりつまっている。ちょっとめくってみるとほぼ地質学の本にみえる。
海に囲まれた島国なのに、その75%が山地であるという山国日本。中緯度のためアジアモンスーンの影響を受け温暖湿潤。縦に3000kmにおよぶ亜熱帯、湿帯、亜熱帯という気候。海流は暖流と韓流がせめぎ合う。これらがもたらしたくれるのが多様な食材で、そこから生まれたのが和食の文化だ。
本書では、次のようにまとめられ解説されていく(以下、主となる食品食材を記載)。
「変動帯がもたらす日本の豊かな水」
・水 豆腐 醤油
「火山の恵と試練」
・蕎麦 下仁田ネギ
「プレート運動が引き起こす大地変動の恵」
・うどんのコシ 蕎麦のコシ
「未来の日本列島の姿と大変動の贈りもの」
・山梨ワイン サバ・ビワマス・ハマグリ
「日本列島の大移動がもたらした幸福を巡る旅」
・カニ ホタルイカ しじみ アユ
「地球規模の大移動と和食」
・酒と水
帯に<マグマ学者が紐解く、その恵みと試練『なぜこれほど多彩なのか』>とある。読んで納得しながらも、この「多彩」はいつまでも続くのか?食の変化と経済効率のためのその恵みは消えていかないのか?と不安になる。
2013年に和食がユネスコの無形文化遺産に登録されて10年。その和食文化の中でのほほんと生きているだけで良いのかと問われる本でもある。
出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。