2022.05.30

世界の地元メシ図鑑
【私の食のオススメ本】

世界の地元メシ図鑑 表紙

  • 書名:世界の地元メシ図鑑
  • 著作編集:地球の歩き方編集室
  • 発行所:地球の歩き方
  • 発行年:2022年

ここRIFFのBOOK紹介で先に『食べるぞ!世界の地元めし』という本を取り上げているが、その著者でもある岡崎大五氏から始まったSNSの投稿が2022年5月に「地球の歩き方」から書籍化された。

「222人の旅人(メンバー)たち(とは言っても在留者も多い)の思い出の味を食の雑学とともに解説」している本である。本文から店名や町のエリアが特定できる記事とそうでないものがあるので「地球の歩き方」とはいえガイドブックではない。

しかし、取り上げられた情報にはいくつかのSNSメンバーのコメントが添えられていて、投稿者本人の情報がリアリティーさを増しているのだ。

また、以前、コラムの方で取材した日本でも専門店が少ない金沢・チェコ料理『DUB』でも作られている茹でパン=クネドリーキもしっかり取り上げられている。

この記事がすぐに旅とかで役立つかといえばそうでもない。ただ、期待していることは、この本を読んだ若者(だけとは限らないけれど)が、このコロナ禍がもう少し落ち着いたら、ここに投稿された世界中の食に興味を持って旅に出てほしいということだ。そういう「目」と「舌」が育たないと日本は孤立化していく。

日本は世界中の料理が世界で一番美味しく食べられるなどとつい言ってしまうが、事実でもあるが井戸の中でしか生きて行こうとしない蛙になる可能性もあるのだ。

今や世界中のレストランの情報が手に取るようにわかる時代だが、現地でも有名店を訪ねても地元メシというものをついスルーしてしまうことが多いはずだ。地元メシには市井の人々の長い歴史も流行も混在している。それを食べ続けたり作りだしたりしているのは地元ビトなのだ。

「食えばわかる」と言ったのは椎名誠だが、全部はわからなくても入り口にはなるのだ。世界を知るには「食から始めよ」だ。

また、その食の差異はわれわれ日本人がはたして豊かなのか貧しいのかを考える機会にもなる。日本食は世界で認められるほど素晴らしいが、日常の食は豊かなのだろうか?ブラジルと同じ牛肉料理を食堂で出すことができないのはなぜだろうか?

そして、国内で調理に関わる人より、一般の旅行者の方がより深く世界中の食を知っているというのも事実かもしれない。素人の投稿と笑わずにペラペラと眺めてみるといい。

「中東料理の真髄はメゼとケバブにあり」「コスタリカのジャングル飯旅」「タイ、チェンラーイの屋台メシ」「インドのライスプディング、キール」「好みのおかずを盛り付ける台湾の自助餐メシ」「フィリピンのバナナミート」「台湾のアスパラジュース」「マレーシアのカリーバン(特大カレーパン)」「ベトナムのエレファントイヤーフィッシュ」

「中国の社食の昼ごはん」「シンガポールのカヤトースト」「ブータンの唐辛子とチーズのスープ」「ミャンマー風クレープ、カウモン」「ミャンマーのモツ煮込みワッター・ドゥトー」「モンゴルのスーテーツアイ(ミルクティー)」「ジョージアのシュクメルリ」

「イギリスのキドニー(腎臓)パイ」「3000年の歴史、南イタリアの主食=フリセッレ」「ノルウエー、図書館のビュッフェメシ」「ドイツ、ブルードヴルスト(血のソーセージ)」「イタリアのルマーケ(カタツムリ)」「ジョージアのゴミ(とうもろこし粥)」「イエメンのシチュー、サルタ」「イラン風ハンバーガー、ベルヤーニー」「ヨルダンの羊肉ヨーグルト煮、マンサフ」「イランのナマピスオ」「ウズベキスタンの乾燥チーズ、クルト」

「マリの野菜と肉のごった煮洗面器ご飯」「トーゴの主食フフ」「エチオピアの主食、発酵穀物のインジェラ」「モーリシャスのカレー」「タンザニアのオロジョは肉団子のライムスープがけ」「ルワンダのジンガロ(ヤギのもつ焼き)」「ナミビア。オリックスとインパラのBBQ」「ボリビアのスバデマニピーナッツスープ」・・・

このように本書には有名無名な料理が数々登場するが、食べた人たちの正直なコメントがこれまたいい味を出している。

WRITER Joji Itaya

出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。