- 書名:神々の食
- 著者:文・池澤夏樹 写真・樽見健吾
- 発行所:文藝春秋
- 発行年:初版 単行本2003年 文庫本2006年
池澤夏樹は90年代半ばから10年間沖縄に住んでいた。写真家の樽見健吾は復帰の時から沖縄に住んで沖縄を撮り続けている「南方写真師」の肩書きを持つ写真家だ。
本書はこの二人によって、10年をかけ南西航空から日本トランスオーシャンとなった機内誌「Coralway」で連載されたものをまとめたものだ。
池澤は「テーマを食材にしたのは我ながら賢かったと今になって思う」と前書きに書いた。言葉や風習では移住組には荷が重すぎると思ったのだ。
そして「食べるものはそのまま文化だということだ」とも書いた。
本部町の豆腐。那覇市のかまぼこ。与那国島の泡盛。座間味島の浜下りの行事食。那覇市の豚肉。名護市のオリオンビール。久高島のイラブー。那覇市の沖縄そば。多良間島の黒糖。豊見城市のマンゴー。宜野湾市のヒージャー。池間島の鰹節。
粟国島の塩。宜野湾市の田芋。名護市の豆腐餻。渡嘉敷島のタコ。具志川市のオキナワン・コーヒー。名護市のアイスクリン。久米島の味噌。那覇市のみき。西表島の黒紫米。沖縄本島の蜂蜜。本部町の追い込み漁。
那覇市の橘餅。読谷村の紅芋。本部町のアセロラ。那覇市のターイユシンジ。沖縄市の麩。本部町のウコン。石垣島のパッションフルーツ。那覇市のブクブクー茶。粟国島のソテツ味噌。伊江島の島らっきょう。具志頭村のゴーヤー。東村のパイナップル。
樽見の撮った食べ物の写真には沖縄が写っている。池澤は沖縄の食の輝きと地道にそれに関わる人のことを文字で写した。これは沖縄の本質を具体的に伝えてくれるバイブルかもしれない。
出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。