2022.10.24

A_RESTAURANT Imaginative liquid ( Mocktails ) September . 2022

Pairing要素を前提にしつつ、料理や使われている素材などをフックに、産地や風土、歴史や文化など連想されるものをグラスの中で表現する 1杯の” 作品 “としてのドリンク。

” Imaginative liquid “

音楽や映画、カルチャーやアートなど様々なものからインスピレーションを受け、通常ドリンクでは使われないであろう”食材”や”植物”などからエキスやフレーバーを抽出。ミュージシャンが曲や詩を書くように。アーティストがキャンバスに描くように、表現方法の一つとしての” liquid “を作り出します。

一見、アーティスティックな感性や直感的に作られていそうな Imaginative liquid ですが、alchemy(錬金術)や mixology(科学的調合)といった科学的・理論的なアプローチで緻密な計算の元、開発しています。

本記事では、そんな Imaginative liquid の発想の起点や表現したかった想い、レシピやリキッド生成の技法を紹介します。

Intro : 無花果

Drink : 奴姉さん – 白いままじゃこの業界やっていけないわよ

焦点 : 豆腐

無花果を使った一皿目の薬味感にインスピレーションを受け、冷奴をイメージしたモクテルに仕立てた。”まずはお通しの冷奴をモクテルでどうぞ”といったイメージで。

大豆の味やフレーバーは欲しいけれど、豆乳のコクは1杯目のドリンクとしてはあまり適していないので、ウォッシュしてクリアに。個人的に冷奴は生姜と醤油で食べたいけれど、ここに生姜を加えるとそのまんま豆腐になって面白みに欠けるため、西洋わさびの香りをインフューズ。

”白”を取り除き、ワサビの刺激やスノースタイルの塩味が、どこかやさぐれた感じの大人な女性のように感じ、グラスはボディの曲線とステムで女性をイメージし、薬味の意味合いも持たせたマイクロアカジソでレースのドレスのスリットを表現し大人の色気を醸す。
表現したいことを”奴姉さん”というネーミングに全て詰め込んだ。
もちろんBGMはあの曲で。

奴姉さん

  • 豆乳 1000ml
  • 生醤油/ひしほ – 株式会社ヤマト醤油味噌 5drops
  • 藻塩 1/2つまみ
  • フレッシュレモンジュース 適量
  • 能登揚浜塩 適量(スノースタイル)

湯煎で60℃に温めた豆乳に少量づつレモンジュースを加えウォッシュする。

タンパク質が分離しきる手前で醤油と藻塩を加え、その後分離させる(分離した豆腐もどきのタンパク質はスタッフが美味しくいただきました)

急冷し、ホースラディッシュを削り一晩浸漬。

濾過してボトリング。

グラスのリムに能登の揚浜塩をスノースタイルに。

マイクロアカジソでデコレーションし、リキッドを40ml注ぐ。

※influenced by music :  Bon Jovi / You Give Love A Bad Name


Interlude : たこ

Drink : Kraken – 伝説の化け物

焦点 : 撒き餌

“たこ”と聞いて頭に浮かんだのが海の化け物 ” Kraken ”
タコなのかイカなのかわからんけど、海に住むとにかくバカでかい多足生物。
当時の海賊も恐れたであろう海の化け物にインスピレーションを受け、ラム酒のようなイメージで作ろうかとも考えた(海賊とラム酒の歴史に関しては長くなるのでまた別の機会に)が、試食させてもらうと、ラムのサトウキビの甘さやコクはちょっと違うなと感じた。

Krakenに関して深掘りしてみると、どうやら彼の吐く墨はめちゃめちゃ美味しいらしく、その墨で魚を集め、一気に大群の魚を喰らい尽くす撒き餌の役割になっているらしい。

めちゃめちゃ美味しい=旨味の凝縮ととらえると料理とも合いそうなので、トマトの旨味を使わせていただく。

料理に合わせ、トマトにハーブやスパイスを加え味を整え、竹炭を溶かし込み Krakenの吐く墨を表現。

最初にイメージしたラム酒のニュアンスとして、バーボン樽を砕いたチップでスモークし、熟成した樽香を溶かし込む。
このスモークは化け物感の演出も兼ねた特効さん(舞台演出)的な役割も担っている。

Kraken

  • Kraken クリアトマトリキッド 40ml・・・※
  • 竹炭パウダー 適量
  • ロックアイス
  • エディブルフラワー
  • バーボン樽チップ

※Kraken クリアトマトリキッド

  • トマト 5ケ
  • 塩 約2つまみ(素材の味次第で調整)
  • フライドオニオンチップ 5g
  • レモンオイル 2tsp
  • バルサミコ 1tsp
  • 白ワインビネガー 2tsp
  • ディル 6g

ブレンダーで撹拌し遠心分離機で分離させる( 6℃ / 4000rpm / 15min )

濾してボトリング。

※influenced by move & music : Pirates of Caribbean / The Black Pearl

Verse : 鱧

Drink : マティーニには早すぎる – 幼さとあどけなさと可愛らしさと

焦点:未成熟

料理に使われている未成熟のブドウ。このブドウをドリンクでも使わせていただく。

味わいとしてはオリーブの要素も大きく、ブドウとオリーブで連想するものーカクテルの王様マティーニ。GINは魚料理と相性もいいので申し分ない。

未成熟のブドウをスロージューサーで搾り、いわゆる搾りカスとなる皮と繊維質をGINのメインボタニカルに置く。

マティーニの構成はジンとベルモット。すでにブドウを使っているので、エルダーフラワーも加えベルモットをイメージ。ジュニパーと蒸留し、蒸留段階でマティーニの要素全てを溶け込ませたノンアルコールGINのイメージで蒸留する。

マティーニのカクテル言葉は”棘のある女性”。要はちょっと危険な香りのする、映画「007/カジノ・ロワイヤル」のヴェスパーの様な“大人の女性“だと思うけれど、”未成熟”のブドウを使用しているためある意味対極になる。

これを小説”長いお別れ”の「ギムレットには早すぎる」という台詞をもじって、”マティーニには早すぎる”とネーミング。お嬢ちゃんにはまだマティーニは早いよという意味合いで”未成熟”を表現した。

※ヴェスパーマティーニはゴードンジン、ウォッカ、キナリレ(現在は製造終了)をシェイクしてレモンピール。

マティーニには早すぎる

  • 未成熟ブドウの皮と繊維 100g
  • グレープフルーツピール 1個分
  • オレンジピール 1/2個分
  • ライムピール 1/2個分
  • ジュニパーベリー 5g
  • コリアンダーシード 2g
  • ワイルドカルダモン 2g
  • ドライエルダーフラワー 3g
  • レモングラス 2g
  • フレンチタラゴン 2g
  • 水 1000ml 

スパイス類を水に一晩漬ける。

ピールやハーブなど全ての材料をフラスコに入れ低温で蒸留する。

( 真空度 38hPa / 回転数 220rpm / hot bath 35℃ / condenser -15℃ )

蒸留したものを一晩冷蔵庫で落ち着かせ、カクテルグラスに40ml注ぐ。

※influenced by Move : 007 / Casino Royale

B「ヴェスパーと名付けよう」

V「後味が苦いから?」
B「一度味を知ると他のものは飲めないから」

いつか女子の前で言ってみたい…

Interlude : とうがらし

Drink : なし

Bridge : 平目

Drink : マジックアップル – 濃縮と発酵と薬草

焦点 : 幻覚

前回に続きマジックアップル。

詳細は前回の記事を参照 

Chorus : 能登牛

Drink : COCOセーキ – フレンチスタイル

焦点:卵

能登牛の脂やトリュフの香り。ここにドリンクで更に重ねると厚みがありすぎるかなという印象を受けた。かといって、折角のトリュフの余韻をリセットさせるような、引き算のドリンクも合わせたくない。そこで思いついたものが卵だった。

スパイス的な要素で重ねるわけでもなく、断ち切るようなサッパリ感でもなく。料理の味わいに薄手のカーディガンを一枚レイヤードするイメージ。

脂の乗った牛肉を中和させる卵黄のつけダレ的なニュアンスと、トリュフの香りにあわせたココナッツウォーター。これらを口当たりを軽くするためフォームであわだてながら混ぜ合わせる。

これだけだと味わいとしてボヤけ過ぎているため、牛の脂と相性の良いホワイトペッパーを溶け込ませリキッドの輪郭を持たせた、ミルクを使わないフレンチスタイルのミルクセーキに仕立てた。

COCOセーキ(2杯分)

  • ココナッツウォーター インフューズド ホワイトペッパー 60ml・・・※
  • 卵黄 1個
  • ブラックペッパー 少々

卵黄にココナッツウォーターを加えフォーマーで混ぜ・泡立てる。

グラスに注ぎブラックペッパーをふる。

※ココナッツウォーター インフューズド ホワイトペッパー

ココナッツウォーター250mlにすり潰したホワイトペッパー(1tsp)を一晩浸漬。

Interlude : 口直し

Drink : なし

Solo : 滝川産合鴨

Drink : なし

Outro : 加賀しずく / 重陽

Drink : Frozen Daikon - 大根滅多切り

焦点 : ダイキリ

梨のデザートには山わさびがアクセントになっている。

梨の食感と山わさびの香りで思いついたものが、まさかの大根だった。

通常のカクテル・モクテルで大根はなかなか使うことのない素材だけに、ぱっと見すごく綺麗だけど、飲んだら大根じゃねーか!と笑っちゃうようなモクテルに仕立てたい。

過去にモクテルの一つの要素として、凍らせた大根を削ってグラスのリムにつけたことがあり、なかなかおもしろかったので今回も凍らせて~フローズン大根~フローズンダイコン~フローズンダイ…フローズンダイキリ!!

もはやただのダジャレである(笑)

ダイキリの構成はラム、ライムジュース、シンプルシロップだ。ベースは大根のエキスに変え、自家製ライムコーディアルを加えればライムジュースとシロップの要素となり大根版ダイキリの完成。大根の繊維を凍らせてゼストすれば文字通りフローズン・ダイコンになる。 

Frozen Daikon

  • ダイコンエキス 30ml
  • 自家製ライムコーディアル 1tsp
  • 砕いた氷 適量
  • 大葉 1枚
  • ダイコンゼスト 適量

大根を荒くすり下ろし遠心分離機でエキスと繊維に分離させる。

分離した繊維をひとまとめにし冷凍庫で凍らせる。

カクテルグラスに砕いた氷を入れライムコーディアルを注ぐ。

ダイコンエキスを30ml加え軽くステア。

大葉を飾り、凍らせた大根の繊維の塊をゼスターで削りかける。

大根のエキスだけでなく、ゼストした大根の繊維の氷の温度があがると、大根の香りが強烈に上がってくる。その香りを嗅ぎながら恐る恐る口に運ぶと、ライムコーディアルの酸と甘みがダイコンエキスと絶妙に混ざり合っていて、悔しいけれど意外と完成度の高い飲み物になっていて思わず笑ってしまう。しょうもないダジャレのネーミングのふざけたものかと思いきや、特殊な技法と計算された配合による、まさに僕らしいモクテルになった。

ダイキリを愛した文豪ヘミングウェイがもし蘇ったら是非飲んでいただきたい。

めちゃめちゃ怒られそうだけど(笑)

元音響エンジニアのバーマン。
外食はコンサートと同じ。料理やドリンク、空間やサービスで楽しいショーを体験する時間。ステージを彩るドリンクで、ショーの一翼を担う。