2021.02.01

文士料理入門【私の食のオススメ本】

  • 書名:文士料理入門
  • 著者: 狩野かおり・狩野俊
  • 発行所:角川書店
  • 発行年:2010年

東京・高円寺でコクテイル書房という古書とお酒の店を営む狩野夫婦が著者だ。
この店のことは狩野俊「高円寺 古本酒場物語」に詳しい。

本好きの人間が、文士たちが作り、食べ、作品に描いた料理というものが再現された作家15人、53の読むレシピ。作家15人、

章立ても面白く、
「肴」文士、喉をならす
「膳」文士、舌鼓を打つ
「厨」文士、腕をふるう
となっている。登場するのは(一部省略)、

 「太宰治」卵味噌のカヤキ、アンコウのフライ 「坂口安吾」オジヤ、鮭の焼き漬け 「檀一雄」大正コロッケ、スペイン酢ダコ、前菜用レバー「内田百閒」タンの塩漬、豚鍋「草野心平」卵納豆、烏賊納豆、厚揚げの白味噌焼き「井伏鱒二」蛸のぶつ切り 「立原正秋」塩辛大根漬、鱈子の塩辛、炒りおから 「吉田健一」小海老が入ったおから、新橋茶漬け

  「池波正太郎」おからの味噌漬け、茄子の丸煮 「藤沢周平」赤穂の漬物、玉こんにゃく、胡麻豆腐のあんかけ 

 「幸田文」えだ豆(塩うで ひたしもの 煮付)、うなぎの煮付け 「宇野千代」蓮の煮〆、極道すきやき、いちじくの利休仕立て、あなごのバター焼き 「森茉莉」オムレット・オ・フィーヌ・ゼルブ、トマトの牛酪煮のせ御飯 「武田百合子」牛肉と桜エビの焼きそば、羊の肉の水たき 「向田邦子」いわしの梅煮、いちじくのウイスキー煮、卵とレバーのウスターソース漬け

おからが目につくのは自分だけだろうか。明治生まれから昭和の始め生まれの文士たち。豆腐屋が町々にあった時代だったことを思う。

それよりも、ここに載った文士たちを知らなかったり、興味がなければつまらないだろうか?いや、この時代にこんな人がいた、でも良いのでは無いか。

この本を読むと文士たちの思想や生き方の発見がある。料理が伝えるものは広く深い。そして直球でもやってくる。

文末の書き下ろしエッセイで矢作俊彦が、文士にも料理にも無縁で15の時からやってきたのは「炊事」だ、だから何を書いて良いかわからないと語る。しかし、氏の作品に現れる横浜の匂いのするものが、たっぷりと描かれていて面白い。他、角田光代、石田千のエッセイもあり。

WRITER Joji Itaya

出版にたずさわることから社会に出て、映像も含めた電子メディア、ネットメディア、そして人が集まる店舗もそのひとつとして、さまざまなメディアに関わって来ました。しかしメディアというものは良いものも悪いものも伝達していきます。 そして「食」は最終系で人の原点のメディアだと思います。人と人の間に歴史を伝え、国境や民族を超えた部分を違いも含めて理解することができるのが「食」というメディアです。それは伝達手段であり、情報そのものです。誰かだけの利益のためにあってはいけない、誰もが正しく受け取り理解できなければならないものです。この壮大で終わることのない「食」という情報を実体験を通してどうやって伝えて行くか。新しい視点を持ったクリエーターたちを中心に丁寧にカタチにして行きたいと思います。